軍事アナリストが苦言。重くて使いにくい『防衛白書』の意味不明

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防衛省や自衛隊のあり方について、さまざまな角度から提言を行ない、気になることがあれば歯に衣着せずにズバリ進言する軍事アナリストの小川和久さん。主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で今回苦言の対象となったのは、令和2年版の『防衛白書』。しかも、その内容に関してではなく、紙質や判型、文字の大きさといった書籍、冊子としての使い勝手の悪さについて鋭く批評しています。

ソ連のノルマ制を想起させる重たい防衛白書

今年も『令和2年版 防衛白書 日本の防衛』(写真右)が届きました。

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毎年、防衛省が送ってくれるもので、以前は白書の担当者からヒアリングを受けていた時期もあります。そんなことで、私としてはおろそかにできない防衛白書ですが、それにしても重い! 上質紙を使ったA4判(縦297ミリ、横210ミリ)で、これは写真集や美術書に使われるサイズです。厚さは17ミリもあり、実に597ページという重厚長大な書籍に仕上がっています。

私が両足首につけている鉛のアンクルウエイト(片側1キログラム)と比べても、1キロを優に超えているでしょう。まさか、防弾板にも使えるようにしたというのではないでしょうね(笑)。

そこで、防衛省・自衛隊への国民の信頼がさらに増すことを願う立場から、ちょっと苦言を。何のために、これほど重くするのか。重いうえにソフトカバーなので、使いにくいことこのうえない。しかも読みにくい。フォントの大きさなどを適切なものにし、読者の目に入りやすくする工夫が足りません。

兵器などの写真こそ多いものの、見てくれの良さだけを、それも自己満足的に追い求めているとしか感じられません。外国に向けて虚勢を張ろうというのでしょうか。それとも、他省庁に対して?この重さのことを考えていたら、旧ソ連が崩壊した原因についての小話が頭に浮かびました。

ソ連のオフィスにあるスチール製のデスクは、大人4人でなければ運ぶことができないほど重い。それは、ソ連の労働を律してきたノルマ制が重量を基準にしているからだ。重いデスクを作れば、1人で持ち上げられる重さのデスクの4倍のノルマを達成したことになる。自然、ソ連中が重量物だらけになる。

わが日本国の防衛白書に限って、そんな馬鹿なことはないと思いますが、読者、つまり国民の立場から編集する必要があることは間違いありません。北朝鮮が弾道ミサイル・テポドン1号を発射した翌年、平成11(1999)年版の防衛白書はA5判(写真下、縦210ミリ、横148ミリ)。496頁の学術書のサイズです。それが平成12年版あたりから大判になり、めくりにくくなりました。

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表紙もセンスが疑われることが少なくありません。人気の書道家に毛筆で『日本の防衛』と書かせてみたり、写真を下敷きにしたデザインに変えたり、ふらふらして一貫性がありません。

ちなみに、手許にあった米国の1985会計年度の『国防報告』(写真下)はキャスパー・ワインバーガー国防長官の時のものですが、濃紺に金文字、国防総省の紋章をあしらったスマートなデザインです。しかも、上質紙を使わず、写真も使っていないので、とても軽い。まだ手書きだった時代のこと、扱いやすくて原稿を書くときに重宝したのを思い出します。

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別に米国と張り合う必要はないのですが、同じ税金の使い道なら、もう少し国民を意識した編集(デザインを含めた)にしてもらいたいと思います。

私が質問したかぎりでは、防衛白書の存在を知っている大学生はゼロ。もちろん、開いたこともありません。官僚を輩出している東大法学部、ジャーナリスト志望者が多い早稲田大学あたりでも、非常に限られた数の学生しか、防衛白書を知らないと思います。こんなところにも、日本の安全保障面の課題、つまり国民との親和性の問題がのぞいているのです。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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