開戦前夜の外交戦。中国の報復に「小型核」で応じるアメリカに死角はないか?

kou20180516
 

新型コロナウイルスの感染拡大により大打撃を受けた世界経済ですが、その再生を、安全保障面での米中対立の激化が妨げています。互いに譲らぬ二大国の争いは、我々に何をもたらすのでしょうか。元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で、国際社会に属する各国政府と国民が直面している課題の分析を試みています。

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米中対立の激化とコロナが蝕む国際政治経済の行方

オリンピックイヤーである2020年が明けた際、誰がこのような混乱を予想したでしょうか?恐らく誰もいなかったはずです。私も朝鮮半島情勢が悪化するとか、米中対立の激化などの予測は行ったような気がしますし、今では遠い昔のように思える1月3日の米軍によるイランのソレイマニ将軍の暗殺で米イラン関係が非常に緊張し、一触即発のムードが漂いましたが、そのすべてをはるかに上回ったのがCOVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックによる世界的なダメージでしょう。

8月20日現在、2,200万人以上を感染させ、70万人以上の命を奪ったCOVID-19は防疫における国際協調の脆さと、相互信用の脆さを露呈し、半強制的に絶たれたものと人の移動は、10年ほど先に起こるとされた“働き方”(Work mode)を一気に変え、リモートベース・オンラインベースでの仕事と教育、そして人のつながりの形をNew Normal(ニューノーマル = 新常態)として定着させようとしています。

そのNew Normalは、これまでの経済モデル、特に成長モデルを変革させ、コロナの感染が“落ち着いた”と言われて経済活動が再開されても、かつてのような賑わいに戻ることはしばらくないだろうと言われています。

実際に今週発表された経済統計によると、主要国経済の2020年4月~6月のGDP成長率は、平均年率マイナス10%ほど(9.1%)となり、2008年のリーマンショック時の約3.5倍の落ち込みとなったようです。日本もその例に漏れず、マイナス27.8%の成長率となり、Bloomberg社の表現を借りると「日本経済は全治5年」というほどのショックとなっています。アメリカ経済も欧州各国の経済も劇的な回復を見込めるきっかけがつかめておらず、次の四半期の経済状況はさらに悪化するだろうと言われています。

中国はいち早く回復した!

そんな報道をよく目にしますが、数字上の回復は存在しても、それらは政府の政策頼みの結果であり、民間の投資はまだ回復せずマイナスですし、家計の出費もまだ戻ってきていないため、“回復の持続性”は不透明です。

以前、世界銀行やIMFの予測値をお伝えし、2020年の下げは8.6%くらいと申し上げましたが、すでに年率ではそれを上回る悪化となっていますし、それは16億人と言われた失業者数をさらに増やす要因にもなりかねません。COVID-19の感染拡大がまだ止まらない中、世界的な経済不安が広がっていると言えます。

それに追い打ちをかけているのが米中対立の激化です。

これまでにも米中貿易戦争によって周辺国が巻き込まれてきましたが、対立と分裂を決定的にしたのは、米とその同盟国サイドからの見解では、【コロナ感染の起点が中国で、中国政府は感染情報を隠蔽していたとの理解】【各国がコロナ対策に奔走している隙に南シナ海での実効支配を強めたり、尖閣諸島への侵入を本格化させたりするという強硬姿勢をより強めたこと】【香港国家安全維持法のスピーディーな施行により、一国二制度を葬り去り、香港の自由を奪ったこと】でしょう。

特に香港国家安全維持法の施行によってアメリカや英国、オーストラリアなどが次々と対中強硬姿勢に打って出ました。香港との犯罪人引き渡し条約の停止や、香港行政府に対する制裁措置の発動で【香港の経済的なハブとしての役割に止めを刺した】のに加え、アメリカ政府は中国の存在そのものを悪とするイデオロギー戦争を仕掛けたことはこれまでにもお話ししてきました。

中国政府もただ言われるままにしていたのではなく、逆に強硬姿勢を強め、欧米や日本からの非難や懸念をよそに、着々と覇権の拡大に邁進しています。

加えて、中国による報復・反撃もスタートしました。その例が、オーストラリアからの鉄鉱石輸入をストップする可能性に言及したり(注:2019年では豪州産の鉄鉱石の9割が対中輸出で依存度高い)、実際に一帯一路で影響力を発揮できるアフリカ諸国からの調達を匂わせたりして、7月以降、対中強硬姿勢を貫くオーストラリアを威嚇し始めました。農産物や食肉に80%の関税をかける措置を取ったのも報復と威嚇の一環でしょう。

またマスク外交などで分断を狙ったEUには、さらなる切り崩し策を講じています。その典型例がギリシャのインフラ整備と不動産への投資にチャイナマネーを膨大に突っ込み、ギリシャ経済の立て直しに寄与することで、ギリシャからの外交的なサポートを得ているようです。その証拠に、EU内で一致団結して対中批判決議を行おうとしても、セルビアや中東欧諸国と共に、ギリシャが反対をして、EU外交の迷走の中心的役割を担っており、結果、EUの存在感と影響力を著しく低下させています。

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