第二の可能性としては、この学術会議問題というのは「下村マター」という可能性です。杉田マターというより、もっと大きな自民党右派文教族のマターであり、その親分格の下村氏が「行きがかり上、杉田を注意せざるを得なくなった」ことで、下村氏の右派の「面目」が立たなくなった、そこで学術会議の問題を出してきて、下村氏の権威を保とう、そんな絵を官僚が描いて党の中枢が乗ったという可能性です。
もしかすると、中道文教族の河村建夫議員を潰す動きなどもこれに絡んでいるかもしれませんし、更にもしかすると菅総理は下村政調会長を試してもいいという計算でやっているのかもしれません。とにかく杉田議員のような「小者」のレベルを越えた暗闘があるのかもしれないのです。
しかしながら、仮に1つ目のストーリーであるにしても、2つ目であるにしても、バカバカしい話には違いありません。菅総理の支持率は74%(読売など)もあるのです。つまり支持の中核はもはや右派票ではないわけで、安倍政権のように右派票を中核にした政権運営をするというような「セコイ」手を使う必要は全くないのです。
にもかかわらず7年半の悪い癖が出て、つい右派票を気にしてしまう、それが安倍政権時代であれば世論の全体から「まあ、あんなもの」と許されていたのが、現在は違うということだと思います。
まだ修正は効きます。マトモな中道実務政権としてしっかり権力を確保し、そこで堂々と守旧派と戦って改革を進めるように軌道修正が必要、今回の事件はそのように総括することができそうです。そのような大局観がなければ菅政権は遅かれ早かれ行き詰まるでしょう。私の憂慮の第2はその点です。
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