Amazon圧勝。クラウドゲームLunaにGoogleが敵わないこれだけの訳

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9月24日、米Amazonが満を持して発表したゲームのストリーミング・サービス、Luna。以前掲載の「世界的エンジニアが指摘、Googleのゲーム『Stadia』3つの欠点」では先行するGoogleのStadiaについて辛口の批評を綴った、「Windows 95を設計した日本人」として知られる中島聡さんですが、Lunaをどう見たのでしょうか。中島さんはメルマガ『週刊 Life is beautiful』に今回、その評価を記しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

Amazon Luna

Amazonは先週、いくつかの新しい製品とサービスを発表しましたが、私がもっとも注目しているのは、ゲームのストリーミング・サービス、Lunaです。

ゲームのストリーミング・サービスとは、サーバー側にゲームマシンを設置し、ユーザーはそのサーバーから送られてくる映像を見ながらリモートで操作して遊ぶ仕組みです。かなり昔からコンセプトとしてはありましたが、ネット環境が整備された結果、ようやく現実的なものになって来ました。

この分野で先行したのは、Google Stadiaでした。ネットワーク遅延があってもちゃんとゲームが遊べるかどうか懐疑的だった私は、去年5月にGoogle I/Oに参加し、技術者から説明を聞き、実際にデモアプリを体験して来た結果、「十分に実用的」という結論に至りました。

その後、11月には正式リリースされ、私自身もサインアップして少し遊んでみました。一番の懸念だったネットワーク遅延の問題は、我が家のネットワーク(Comcastのケーブルネットワークに有線接続)でも全く問題になりませんでした。

しかし、残念ながら全体的なユーザー体験がとても悪いのです。“Pro Service”と呼ばれる月額10ドルの有料のサービスに加入したのですが、それで何が出来るのかがとても分かりにくい上に、ラインアップとして揃っているゲーム一覧のユーザー・インターフェイスの設計がとても悪く、全くワクワクしないのです。これはGoogleのほとんど全てのサービスに共通する話ですが、せっかく良いものを持っているのに、ユーザー体験の最後のツメがとても甘いのです。

Google Stadiaの一番の問題点は、ビジネスモデルです。月額課金サービスであるGoogle Pro Serviceを除けば、通常のゲームは、既存のゲーム端末と同じく固定価格で買い取るモデルですが、これがオンライン・サービスとはミスマッチなのです。

ユーザーから見れば、サービスである限り、購入したゲームが(Googleやゲーム・パブリッシャーの都合で)将来使えなくなる危険性は十分にあります。また、サーバーの運営コストを考えると、固定価格で購入したゲームをいつまでも遊べるというのはとても理不尽な話です。

私がゲーム開発者から聞いた情報によると、サーバーの運営コストは全てGoogleが負担するそうですが、そんなビジネスモデルがいつまでも続けられるわけがなく、いつかは破綻してしまうと私は思うし、そう思うと、ますますStadia上でゲームの購入はしたくありません。

さらに問題なのは、Googleのゲームサーバーが独自のLinuxサーバーである点です。最近のゲームは、UnityやUnreal Engineの上に作られているので、移植はそれほど難しくはありませんが、ゲーム開発者からすると、Stadia専用のビルドを用意し、テストし、アップデートするだけで結構な手間がかかります。Stadia上のタイトルの数がいまだに少ないのは(UIが悪いので、いつくあるか数えることが出来ませんが、30ぐらいしかないように見えます)、それが原因だと思います。

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