日本人には、自分の意思や好みより他人の目が気になるという面があります。日本にいると普通の感覚でも、日本を飛び出て長く海外にいる人から見ると「そこまで気にしなくても…」と思うことが多くあるようです。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』著者でニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんは、日本からニューヨークを訪れたお客さんが、「ロングブーツ姿の太ったニューヨーカーに驚いていた」ことに驚いたと、そのやりとりをユニークな筆致で紹介しています。
人目を気にしなくていい街
日本でもそうかもしれません。NY州では、いつでもどこでも公共の場所での「授乳」が許可されています。普通の場所で、おっぱいを結構、見ることになります。意外と珍しい光景ではないので、特別な感情も沸きたちません(笑)。
今日も服屋さんで若いお母さんが普通におっぱいを赤ちゃんにあげていました。何年か前、クイーンズの図書館で授乳していたお母さんが館内の職員に「トイレに行ってやれ!」と注意され、新聞社に投稿。結局、職員が謝罪するという事件(?)が起きました。あんまり、ニューヨーカーは人目を気にしません。日本人にくらべると、一切しない!と言ってもいい。
ちょっと極端な例ですが、路上で、立ちしょんべんならず、女性の座りしょんべんをこの20年で三度ほど見かけました。(もちろん、これはさすがに異常な光景です。例として出すには間違えてるw)日本ほど人目を気にしなきゃいけない社会も窮屈だけど、人目を気にしなさ過ぎる、この街も結構、問題アリ、だと思います。
日本で「ロングブーツ」は限られた人の特権?
でも、ひとつだけ。
前回、ニューヨークに来られたお客さんを案内していた時のこと。僕と同世代のその女性は、街を歩きながら「こっちって、太ってる人もフツーにロングブーツ履きますよね」とつぶやきました。
最初は彼女の言ってる意味がわからず、聞き返しました。
「あ、いや、日本だと、ロングブーツ履きたくても、スタイルよくないと履けない空気があるというか……痩せてから履こうっていう人もいたり、あたしは足が短いから生涯ロングブーツは履けないっていう友達がいたり……」
でも、欧米人に比べたら、モンゴロイド、基本、短足でしょう?
「そうなんです、だから、日本だと、ロングブーツはホント、限られた人しか履けないというか……」
僕はここで吹き出してしまいました。それ、本当?ちょっと大袈裟に言ってない?
「でも、こっちは丸太のような体型でも、普通に履いてますよね。好きに、自由に、ファッションを楽しんでいるというか……」
こっちの人が楽しんでいるというより、日本の社会が気にしすぎなんじゃないかなと思います。
「もちろん、気にする必要はないと思うんです。私は、ファッションくらい好きなモノを好きに着たいし、後ろ指さす奴は指せばいい。そう思ってはいるんです。関係ないし、誰にどう言われようが、好きなファッションを着る権利はあるし、周りの目なんて気にしないし、そんなの気にする方がおかしいし、気にしない自分でいたいし、気には結局していないんですけど……」
……すっごく、気にされてますよね?
「……はい…………でも、周りがそういう空気になるし…………」
でも、今回の短期間ながらのニューヨーク観光で、帰国後、好きなファッションを好きに楽しめるようになれたらいいですね。そう微笑むと、彼女はとびっきりの笑顔で「はい!」と答えてくれました。
あ、ところで、新宿あたりにいる、全員同じ髪型と全員同じ体型と全員同じファッションのホストくん軍団は、気にならないの?
ついつい口が滑った僕の質問に、彼女はこれ以上ないほどのキョトン顔で、こう答えました。
「……?…………ぜんぜん」
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