猫の腎臓病に特効薬ができるって本当?いつ頃?医学博士に聞いてみた

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しゃべる猫「しおちゃん」の飼い主で、米国在住の医学博士しんコロさんの元に、「猫の腎臓病に特効薬の噂。本当に数年で出来るの?」という質問が届きました。しんコロさんは、自身のメルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の中で、正しい飼い方をしないと腎臓病を引き起こしてしまう事があるとしながら、その可能性がある薬が実用化されるのは事実として、その詳細を記しています。

猫の腎臓病に特効薬の噂。本当に数年で出来るの?

Question

shitumon

猫は腎臓を患う事が多いのですが(正しく飼えてないのか?)、腎臓病の特効薬が数年後には出来るという噂を聞きました。その真偽はどう思われますか?

しんコロさんの回答

特効薬になるかどうかは分かりませんが、そのポテンシャルがある薬が実用化されるのは事実です。質問者さんがおっしゃる通り、正しい飼い方をしないと腎臓病を引き起こしてしまう事がありますが、遺伝的にネコ科の動物は腎臓病になりやすい特徴があります。

以前にも少しこのことについてメルマガで書きましたが、東京大学のグループが「ねこの腎疾患は生まれつき改善しにくい」というメカニズムを解明しました。そしてこの改善しにくい部分を助けてあげることで、腎不全を劇的に改善できる可能性があることが分かりました。

腎臓は血液の老廃物を濾過するフィルターのような器官ですが、ここに何らかの原因で炎症が起きると、組織の破壊によるデブリ(組織の死骸によるゴミ)が生じます。このデブリが腎臓のフィルターに詰まってしまうと、腎臓の組織にダメージが及んでしまいます。

ねこ以外の動物では、腎臓に炎症が起きるとAIMというタンパク質がこの組織ゴミにくっつき、そしてAIMが付着した組織ゴミは積極的に上皮細胞という細胞によって掃除されます。通常、AIMは血中のIgMという抗体に付着して存在します。ねこ以外の動物では腎疾患が起きるとAIMがIgMから解離し、速やかに組織ゴミに付着します。

ところが、ねこではAIMとIgMの親和性(付着する力)が強く、腎疾患が生じてもAIMがIgMから解離しないのです。この研究を元に、AIM製剤の開発と試験が進んでいます。2022年までに商品化を目指す形で進められています。

ただし、この薬は抗体薬と似た扱いになるので、価格がかなり高いことが予想されます。とはいえ、ねこの寿命を劇的に伸ばす薬が開発されつつあるのは嬉しいことです。

image by: Shutterstock.com

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ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。

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