毎日新聞記者は勉強不足。「防弾車」の窓ガラスが動く本当の意味

 

私は2013年9月、カリフォルニアのパサディナで大統領が西海岸にきたときに使う専用車に触れたことがありますが、これはブッシュ大統領が使っていたもので、大統領の警護を担当するシークレットサービスのオープンハウスで展示されていました。ガラスは固定式で厚さ120ミリ、ドアは私の身体以上の厚みがありました。

2019年2月にハノイに行った北朝鮮の金正恩委員長は、同じベンツでも「マイバッハ」ではなく、ガードと呼ばれる特注の防弾車を特別列車で3台持ち込みました。しかし、世界の専門家は呆れ返ってしまいました。窓を開け、満面の笑顔で手を振っていたのですが、これで金正恩委員長の専用車の防弾能力が低いことがわかってしまったのです。

窓ガラスが上下に動くということは、ドアの内側にガラスを収納するための空間があるということで、そんな構造ではRPG-7対戦車ロケットや14.5ミリ機関銃の徹甲弾には耐えられません。窓ガラスを固定化し、ドアの中も何層もの防弾構造にしてあるのが米国大統領の専用車なのです。私が触れたブッシュ大統領の車の場合、運転席側のガラスだけが手動で上から3センチだけ開くようになっていました。これは何かの事情で外部の人間と肉声で話さなければならなくなった場合の対策です。

加藤記者の意欲は高く買いたいと思いますが、取材した情報源が専門家ではなかったことが明らかな記事でした。日本の外務省や警察はこのレベルです。加藤記者には奮起して、修正を兼ねた続報を期待したいと思います。実を言えば、国際水準を満たした防弾技術を知っている専門家は、日本には一人しかおりません。(小川和久)

image by:bibiphoto / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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