なぜそうなのか。政府対策本部の専門家会議や厚労省クラスター対策班の関係者で組織された「コロナ専門家有志の会」のサイトに、次のような説明がある。執筆者は中島一敏・大東文化大教授だ。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの報告は、一般市民に広く検査を行うよりも、日本が行っているような感染者の接触者調査の方が、感染予防効果は高いとまとめています。…検査で「陰性」という結果がでたとしても、安心はできません。PCRの感度は70%程度であり、約3割は、本当は感染しているのに「陰性」と結果がでる(偽陰性)からです。感染しているのに「陰性」と結果が出た方が感染予防の不十分な行動をとると、他の方への感染につながるかもしれません。…保健所が行う接触者調査と、無症状の方にランダムに検査を繰り返す方法を比べた研究もあります。濃厚接触者に自宅待機などの対策をしっかりとってもらうと、感染者が64%減少するのに対し、毎週5%の住民にランダムに検査をしても、2%しか減らせません。
首相や閣僚を主要メンバーとする政府対策本部。その下部組織である分科会(尾身茂会長)や厚労省御用達の専門家らがこのような考え方なのだから、政府が無症状者への検査に後ろ向きなのはあたりまえである。そもそもPCR検査で偽陰性を問題にしているのは日本くらいのものではないだろうか。
厚労省医系技官のトップ、医務技監をポスト創設以来3年にわたってつとめ、昨年8月、定年退官した鈴木康裕氏の、「PCR検査は重症者に限定すべき」という方針から厚労省官僚や政府対策本部の閣僚たちはいまだに抜け出せないでいる。
「感染症ムラ」と揶揄される専門家たちは、国交省所管の「GoToトラベル」に対して異論を吐いても、厚労省のPCR検査方針については批判しない。それどころか、支持しているのだ。
これでは、容易に「感染源」は消滅せず、よほどワクチンが有効でない限り、緊急事態宣言を繰り返す羽目になってしまうだろう。
image by: 首相官邸