バイデン新政権は口だけで何もせず?対中国「戦略的忍耐」の弱腰

 

それはともかく、トランプ前政権による中国封じ込め政策の「成果」について、自由時報に面白い記事が掲載されていました。「中國全民瘋造芯 遍地泡沫及爛尾」(中国が血道をあげる中核製造業はバブルとポンコツに満ちている)というタイトルで、2020年の中国の半導体チップ内製化率はたった5.8%だったというものです。

LTN經濟通》中國全民瘋造芯 遍地泡沫及爛尾

中国は「中国製造2025」を掲げ、2025年までに製造業における大国化を目指しています。もちろんその中核となるのは最新の半導体技術です。中国政府は2020年までの半導体チップ自己生産率40%を目指し、2014年から中国国家集成電路産業投資基金(CNIIF)を立ち上げ、第1期には1,387億元の大型ファンドが設定され、さらに2019年の第2期からは2,041億元の巨大ファンドが設定されました。

ところが、こうした基金の補助金や優遇措置目当てに、経験も技術も人材もない「三無」企業が半導体事業に参入したため、半導体投資プロジェクトが相次いで破綻。たとえば江蘇省徐義市では、2017年に「江蘇中璟航天半導体」というプロジェクトを立ち上げ、総額120億元を投資して703畝の土地に工場を建設、2018年末までに完成し、年間125億元の半導体を生産計画であったものの、建設から半年で音沙汰なしとなり、二度と言及されなくなっているそうです。

また、2016年に江蘇省淮南市の重点プロジェクトとして設立された徳淮半導体は、総投資額450億元を計画し、中国で1位、世界で2位の半導体大手になるという野望をぶち上げたものの、いまだ着工すらされず、近年は賃金未払いが問題化しており、閉鎖の噂が絶えません。

「中国経済週報」は、業界関係者の話として、建設、アパレル、セメント、水産物、自動車部品業でさえも半導体産業に転向する姿勢を示しているものの、業務範囲がICに関連していれば現地での減税や融資を受けることができるため、多くの企業は資金繰りをごまかすことが目的だということです。

武漢発新型コロナウイルスの感染が世界に拡大し、各国でマスク不足が深刻になった際も、中国ではここぞとばかりマスク製造に乗り出す企業が乱立し、異物混入や不良品マスクが世界に輸出され、大きな問題になりました。それと同じです。

半導体業界のマーケット・リサーチを行っている「IC Insights」は、中国は2020年に227億ドル相当の半導体チップを生産し、内製化率は15.9%になると予測しているものの、この数字には、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)やサムスン、SKハイニックス、インテルなど外資系企業の生産額も含まれており、中国に本社を置く企業が生産する半導体チップは83億ドルに過ぎず、これは5.8%の生産率にすぎないそうです。

トランプ政権は、アメリカの先端技術が含まれている半導体製品の中国企業輸出を禁じ、そのため、2020年9月から台湾のTSMCが中国向けの半導体チップの輸出を停止し、海外拠点をアメリカと日本に設立しようとしていることは、先日のメルマガでもお伝えしました。

【関連】トランプの思わぬ置き土産。日米台「半導体同盟」が中国覇権を打ち砕く

その結果が着実に出てきているということです。サキ報道官の発言からは、一応、バイデン政権もこの路線を踏襲するようですが、「戦略的忍耐」などといって放置していると、いつのまにか中国に技術を根こそぎ持っていかれるということになりかねません。強い言葉で中国を牽制しても、実態は「やられ放題」という、オバマ政権の二の舞になる可能性も少なくありません。

海外から優秀な人材を集める「千人計画」も要注意です。ようやく日本の文部科学省も「千人計画」を念頭に、2021年度から「科学研究費助成事業(科研費)」について、申請者が外国の研究資金を受けている場合は申告するよう義務づけました。

【独自】中国の「千人計画」念頭、外国の研究資金に申告義務…すでに審査開始

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