(2)どのように成長・変化したのか?
CESを主催する全米民生技術協会(Consumer Technology Association 、略してCTA)は、CESの開催期間の1月11日から14日のうち11日はプレス向けの基調講演として開催。
その中のCTA主催のカンファレンスで紹介されていたのが、最新テクノロジーの動向や今年のCES全体で鍵を握る重要なトレンドで、新型コロナウィルスの影響や対策の一環によって世界中で最先端テクノロジーの受け入れが早送りされ、劇的に加速したと取り上げています。
例えば、
- Eコマースによる配送はわずか8週間で過去10年分も増加
- テレメディシン(遠隔医療、診療)の予約がたったの15日間で10倍
- ストリーミング・ビデオの契約者数もたったの5ヶ月間で過去7年分も増加
- リモート・ラーニング(遠隔学習)の利用者は2週間で(米国内で)2億5,000万人も増加。
これらは大手コンサルティング会社のマッキンゼーの調査レポートをもとにしたものだが、別のカンファレンスではこれらを上回る変化が見られるものもありました。
例えば、教育をテーマにしたCESの別のカンファレンスの中には 、2億5,000万人どころか『全世界の16億人の学生が瞬時にオンラインに放り出された』(つまり16億人が一気に増加)と指摘しているものもあるほどとなっています。
つまり、コロナ問題は想像以上に様々な分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させたのです。
この他、eマーケターによる別の調査によると 、Eコマースの売上も急激に増加。
米国のEコマース売上高は2020年中に当初の予測の18%を大幅に上回る対前年比32.4%増。金額にして7,495億ドル(1ドル104円換算で77兆7,000億円)と伝えられています。
で、これだけ大きな変化が起こると、コロナ以前までに蓄積していたあらゆる消費者データが使い物にならなくなっているという話も非常に注目されています。
アクセンチュアのカンファレンスで話されていたのですが、例えば、ロンドンマラソンは史上初のバーチャル開催をしたけども、コロナ以前に申し込んでいた参加者データを根底から覆すほど数多くの人たちが世界中から参加したそう。
これは何を意味しているかというと、大会を開催するにあたり、参加者からの参加費では賄えないので、スポンサーを集めます。
その際、過去の参加者データをもとにこういう属性の人たちが参加するので御社にとって適切なスポンサー大会ですよと説得したりするわけですが、属性が根本から変化してしまうと、スポンサーを説得する材料がなくなってしまうわけなのです。
他にもリモートワークにより日頃みていた街頭広告は見なくなったし、人々の生活圏も変化しています。
だから、アクセンチュアのアナリストによると、これまで自社が想定してきた顧客の特徴・性質に関するあらゆる情報を、少なくても今後数年をかけて再び調査しなおさなくてはならない状況になっているのだそうです。
これに関しては欧米ほどリモート・ワークの浸透していない日本ではいまいちピンと来ないかもしれません。
でも、日米ではそれだけの差がすでに出ているという点はちゃんと認識しておくべきでしょう。
今後、欧米で出てくる新たな商品やサービス社会現象を理解するヒントになりますし、海外に事業展開したいという方にとっては抑えておくべき状況かと思います。
ネガティブなことばかりではなく、感染や死者の少ない日本だからこそ、まだまだ自由に動ける状況はあると思うので、アメリカで大きな変化が起きている今こそ何かをするにはチャンスがあるとも言えるかと思います。
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