官僚も姑息。菅首相ロン毛長男を違法接待に走らせた衛星放送利権の闇

 

2月22日の衆議院予算委員会。文春砲でこの一件が暴露されて以来、国会初お目見えとなった総務省ナンバー2、谷脇総務審議官(事務次官級)は、東北新社からどのような形で会食の誘いがあったかについて、こう述べた。

「4回とも、私はやりとりしていない。秘書と先方の担当者で日程調整をした。昨年10月7日の会食は、秘書のパソコンにメールで案内が入り、秘書を通して出席の返事をした」

そのメールには東北新社側の出席予定者が記されており、正剛氏の名もあったという。

谷脇氏は旧郵政省組のトップだが、主に情報通信分野を歩み、安倍政権では内閣官房のIT担当審議官として当時の菅官房長官に重用されていた。携帯料金値下げを推進するキーマンでもある。

放送行政に関しては、谷脇氏は実務経験がなく、業界とのつながりも薄い。それでも、あたかも公務であるかのごとく、秘書を通じて高級料亭での会食に出席の返事をしている。菅首相と東北新社の関係に配慮したとしか思えないのである。

もちろん、2006年からしばらくの間、菅総務大臣の政務秘書官だった正剛氏を谷脇氏は知っているだろう。

菅首相は、東北新社との関係や、正剛氏が入社したときのいきさつについて、2月22日の衆院予算委で、こう語った。

「東北新社の創業者(故植村伴次郎氏)は同じ秋田の出身で懇意にしていた。長男(正剛氏)は、私が植村さんに会うとき一緒についてきていた。政務秘書官時代に2人の関係が深くなったのも事実で、就職が決まった後、私は報告を受けた」

東北新社の創業者とは親しかったが、正剛氏の就職を頼んだおぼえはない、というわけだ。

2月17日の衆院予算委で、菅首相は植村伴次郎氏から2012年に150万円、植村氏の長男で当時社長だった植村徹氏から12年12月~18年10月に計350万円、合わせて500万円にのぼる献金があったことを明かしている。

東北新社を、衛星放送業者のなかでも菅銘柄の特別な存在として、総務官僚たちが見ていたのは間違いない。

企業が監督官庁の役人を接待する目的は、法運用などで自社に有利に取り計らってもらいたいからだ。東北新社は、大臣秘書官時代に築いた菅正剛氏の総務省人脈を活用し、スターチャンネルなど衛星放送における既得権益の維持、拡大をはかろうとしてきた。

2017年1月には、悲願の「超高精細度テレビジョン放送に係る衛星基幹放送業務」の認可を取得し4K、8K時代に対応する準備を整えた。

そして、「スターチャンネル」「ザ・シネマ」の4K放送が、2018年12月にスタートしたのだが、総務省はほぼ同時期に、BS放送で3チャンネル分の新規参入事業者を募集し始めた。東北新社の総務省に対する警戒感が強まったのは間違いない。

週刊文春が文春オンラインや誌上で暴露した、会食時の音声データは、そんな事情の断片をうかがわせる。

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