秋本氏が局長をつとめる総務省情報流通行政局は2019年3月、「放送法の一部を改正する法律案」をまとめた。そのなかで、衛星基幹放送の新規参入や多様化、高度化をはかるため、新たに周波数使用基準を定めて、許認可審査の要件とする方針を打ち出している。
つまり、限られた電波を効率的に利用することで、より多くの事業者が参加できる環境を整え、競争のなかから質の高い放送を生み出そうという目論見だろう。
しかし競争激化は、東北新社のような既得権を持つ事業者にとっては好ましいことではない。衛星放送関係のエリート官僚たちをできる限り取り込んでおこうという魂胆の接待攻勢は、環境変化を怖れるがゆえの悪あがきといえる。
一方、接待される官僚の側からみれば、秘書官のころから知っている菅首相の息子の誘いゆえに、気安くもある半面、菅首相の影を感じるプレッシャーもあり、畢竟、味方の顔をしておくのが得策というズルい考えも働いたに違いない。
いずれにせよ、東北新社が躍起になって官僚たちを接待し、倫理規程違反を承知で官僚たちが馳せ参じたのは確かである。官僚たちは、接待の意味するところを汲み取り、いくばくかのマル秘情報を提供するくらいのことはしただろう。
上記3人のわずかな時間の音声データにおいてさえ、総務省の所管業務に関連したディープな話が出ている。こうした接待が「社交儀礼の範囲内」であるとは思えない。贈収賄の色合いがますます濃くなってきた。
image by: 首相官邸