妻の不倫相手が逆ギレ&慰謝料の値引き要求。それでも夫が間男を許した裏事情

 

そして、男の待つ喫茶店に現れたのは妻ではなく、夫の誠也さんでした。男は「ヤバい」と気付くも逃げきれず、誠也さんは直談判に持ち込むことに成功したのです。「しかるべき責任をとるのが筋なんじゃないか? あんたのせいでうちの家庭はめちゃくちゃだよ!100万円くらい(の慰謝料)は払えるだろ?」と切り出したのですが、男は「それなら証拠を出せよ、証拠を!」と反論。

誠也さんはLINEのメッセージ、電話の着信履歴、そしてツーショットの写真などを用意したのですが、いかんせん肉体関係の証明にはなりません。しかし、今回の場合、妻は肉体関係を認めています。双方ではなく片方(妻)の証言があれば十分です。証拠が不十分でも、十分な証言があれば事足ります。

そこで誠也さんは「妻はすべてを白状しているんだ!」と切り出したのですが、男はさらに抵抗。「彼女に家庭があるなんて知らなかった」と言い逃れをしたのです。しかし妻は男に対して家庭の愚痴や不満、悪口をこぼしているはず。誠也さんは「全く何も言っていなかったのか」と追及。さらに「同じ会社なのに結婚しているかどうか分からないなんておかしいだろう。(妻の)スマホの待ち受けは家族の集合写真だし、指輪もつけているだろ?」と畳みかけたところ、男の言い訳が嘘だということが明らかになったのです。 

すると男は、妻に不倫の責任を押し付けようと画策。「彼女だって自分の夫子がいるのに積極的に付いてきたんだから、慰謝料の一部を彼女に請求したらどうなんだ!」と逆ギレしたのです。婚姻期間中に起こったトラブルについては、慰謝料をその都度、清算するのではなく、「離婚時にまとめて清算する」のが原則です。今回の場合、誠也さん夫婦は離婚しません。そこで誠也さんは「妻は今のタイミングで慰謝料を支払う必要がない」とやり込んだのです。

いいかげん男は慰謝料を払わないと解放されないと悟ったようですが、この期に及んで「今、手持ちがないんだ」と釈明。「80万なら何とか」と値引き交渉に切り替えたのです。誠也さんの希望額は100万円。例えば一括ではなく、残りの20万円を次回のボーナス月に支払うという分割の条件なら100万円に達します。

しかし、残りの20万円を回収するまで気が休まりません。本当に振り込まれるのか、振り込まれなかったらどうするのか。数ヵ月先なら男は携帯の番号、LINEのID、メールアドレスを変更し、連絡をとれなくする可能性もあります。しかし、今回の目的は夫婦関係の修復です。いつまでも男の存在がちらつくようでは悪夢を忘れることはできません。そのため、誠也さんは減額に応じ、80万円だけを受け取って男を許したのです。 

最後に筆者は「きちんと水に流すことが大事ですよ」と誠也さんに言い添えました。悪いのは妻ですが、努力しなければならないのは妻だけではありません。誠也さんも「忘れる努力」をする必要があります。結婚生活を続ける上で、今後も意見が合わず、喧嘩になる場面があるでしょう。そこで誠也さんがもしも「不倫した分際で何だ!」と一蹴すれば、妻は絶望し、コミュニケーションをとるのをやめ、家庭内別居の状態に陥ります。実際のところ、不倫発覚から数年後に性格の不一致で離婚することも多いのです。誠也さんがいつまでも根に持たず、きちんと妻を許し、前向きに進んでいくことを期待します。

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行政書士の露木幸彦が夫婦の離婚、不倫、未婚出産、婚活の法律、交渉術、会話技術を解説明石家さんまさん司会のホンマでっかTV,ブラマヨさん司会の世界のこわ~い女たち、小倉さん司会のとくダネ、バナナマン設楽さん司会のノンストップなどに登場。11冊の著書を持ち累計部数は
5万部を突破。日本経済新聞、朝日新聞電子版では連載を担当。開業から16年で相談2万件の実績。

注)離婚手続に関する一般的説明や経済的観点から必要な離婚条件に算定を超え、個別事情を踏まえた離婚手続や離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

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【著者】 露木幸彦 【発行周期】 ほぼ 月刊

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