日テレ『スッキリ』アイヌ民族差別発言で露呈した「無知」という罪

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日本テレビ系の情報番組『スッキリ』内で、アイヌ民族に対する差別的な表現が放送され問題となっています。制作サイドの不勉強さが露呈したあまりに酷い事態でしたが、「無知は時として罪となってしまう」とするのは、人気ブロガーのきっこさん。きっこさんは今回の『きっこのメルマガ』で、自身の体験を交えつつ、「無知」が原因となり言葉で人を不快にさせないため、一人ひとりが心がけるべきことについて考察しています。

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無知の知

3月12日(金)の日本テレビ『スッキリ』の中で、アイヌ民族を傷つける不適切な表現があったとして、同日の夕方のニュース番組の中で局アナがお詫びするという出来事がありました。わが家にはテレビがないので、あたしは事後にネットで確認しましたが、毎週金曜日の最後に動画配信サービス「Hulu(フールー)」の番組を紹介する「週末ジョイHuluッス」というコーナーで問題発言がありました。

この日に紹介されたのは、アイヌ文化の中で生まれ育った女性の葛藤を描いたドキュメンタリー『Future is MINE -アイヌ、私の声-』という作品でした。コーナーを担当するお笑い芸人、脳みそ夫さん(41)が「スッキリス」というリスの着ぐるみで進行し、作品を紹介した後に「アイヌって本当に美しいッスね~」と感想を述べました。そして「この作品とかけまして、動物を見つけたと解く。その心は、あ、犬!ワンワンワンワン!」と謎かけを披露したのです。

脳みそ夫さん自身が考えた謎かけなのか、放送作家が書いた台本なのかは分かりませんが、これは番組側の大失態です。長年、アイヌ以外の日本人「和人(わじん)」から迫害を受けて来たアイヌの人たちにとって、この「アイヌ」を「犬」にかけて呼ぶという行為は、実際にアイヌの人たちが経験して来た「人間以下」を意味する差別の象徴のような言い回しなのです。

野田サトルさんの人気漫画『ゴールデンカムイ』でも、アニメなら第1期の第2話「のっぺら坊」の中に、アイヌの少女アシリパ(「リ」は小さい字)を連れた不死身の杉元が、雪山で脱獄王の白石を見つけて捕縛した場面で、次のようなやり取りがあります。

白石 「そのアイヌは、お前さんの飼犬かぁ?」

 

杉元 「あご砕いて、本当にしゃべられんようにしてやろうか!」

 

アシリパ 「よせ杉元!私は気にしてない。慣れてる」

すると杉元は、白石のあごを掴んでいた手を離し、下を向いてつぶやくように言う。

杉元 「慣れる必要なんかないんだぜ‥‥」

杉元は和人ですが、アイヌをよく理解しており、熊に襲われた時に助けてくれた命の恩人でもあるアシリパのことをとても大切に思っているため、侮辱されたアシリパの代わりに怒ったのです。そして、アシリパ本人は「アイヌ」を「犬」にかけて侮辱されることに「慣れてる」と言っています。この作品は明治時代の北海道と樺太が舞台ですが、アイヌ語やアイヌ文化の専門家が監修しているため、こうした負の歴史についても当時の事実に正確なのです。

今回の『スッキリ』の放送後、SNS上には「これは酷すぎる」「公共の電波で許されない差別」「アイヌの作品を取り上げるなら最低限の勉強をしてほしい」などの声が相次ぎました。そして、日本テレビは「コーナーの担当者に、この表現が差別に当たるという認識が不足しており、放送前の確認も不十分でした。その結果、正しい判断ができないまま、アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現で放送してしまいました。アイヌ民族の皆様、ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げるとともに、再発防止に努めてまいります」と謝罪しました。

しかし、この謝罪を受けても「北海道アイヌ協会」の大川勝理事長(76)は「頭から水を掛けられたような気持ちで、はらわたが煮えくり返る思い。残念というほかない」とコメントしました。そして、何らかの形で日本テレビに対応を求めて行くと述べました。また「静内アイヌ協会」の葛野次雄会長(67)は「撤回、謝罪したからといって消せるものではないし、許される問題ではない」と述べ、日本テレビに抗議文を送ると言いました。

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