検察の逆襲。ついに始まった安倍晋三元首相の逮捕カウントダウン

 

しかし、世の中はそんなに甘くはありませんでした。安倍晋三氏が首相を辞任してからちょうど半年後の今月3月18日、安倍晋三氏の飼犬として、小渕優子・元経済産業相や甘利明・元経済再生相の事件を握り潰して来た黒川弘務・元東京高検検事長が、賭博罪で「略式起訴」されたのです。東京地検は昨年7月、黒川元検事長を「不起訴」としましたが、検察審査会が12月に「起訴相当」と議決しため、今回、判断を変更したのです。

実は、この「略式起訴」は既定路線でした。もしも今回も東京地検が「不起訴」とすれば、検察審査会は2回目の審査でも「起訴相当」と議決しますので、黒川弘務氏は「強制起訴」され、正式な裁判を受けることになります。そうなると、禁固刑以上の判決が確定した場合、黒川弘務氏は弁護士資格を剥奪され、6,000万円近い退職金も返還しなくてはならないのです。しかし「略式起訴」なら罰金刑で済みますから、弁護士資格も退職金も守られるのです。

ま、これは、かつての仲間に対する東京地検の温情なのかもしれませんが、重要なのは量刑うんぬんではありません。安倍政権下では「不起訴」だった安倍晋三氏の飼犬が、首相が代わったことで、略式と言えど「起訴」されたという事実なのです。もしも今も安倍政権が続いていたら、首相官邸はあらゆる手段を使って司法に介入し、黒川弘務氏を守ったでしょう。

検察審査会の11人の審査員は、裁判員制度と同じく国民の中から「くじ」で選ばれますが、任期は6カ月、数カ月ごとに5~6人ずつ入れ替えになります。11人のうち8人以上が「起訴相当」と判断しなければ強制起訴には持って行けないため、11人のうち4人、官邸の息の掛かった者を紛れ込ませておけば、いくら市民グループが告発しても、小渕優子氏や甘利明氏の時のように逃げ切ることができるのです。

しかし、安倍晋三氏が首相を辞任したことで、検察審査会への首相官邸による政治介入がなくなったようです。その分かりやすい例の1つが、3月12日付で検察審査会が「起訴相当」と議決した、自民党の菅原一秀・前経産相による「公職選挙法違反事件」です。安倍晋三氏の「お友だち」として初入閣を果した菅原一秀氏は、入閣からわずか1カ月で、選挙区内の有権者に香典などを渡していた問題などで辞任に追い込まれ、その後、市民グループから刑事告発されました。

すると、告発を受理した東京地検特捜部は、ロクに捜査も行なわずに、安倍政権下の2020年6月25日、菅原一秀氏を「不起訴」にしたのです。小渕優子氏や甘利明氏の時とまったく同じ流れでした。しかし、安倍晋三氏が辞任して半年後、任期6カ月の検察審査会の審査員11人が全員入れ替わったタイミングの今月3月12日、検察審査会はこの東京地検の「不起訴」の判断に異を唱え、「起訴相当」と議決したのです。東京地検が再び「不起訴」と判断すれば、検察審査会の2回目の審査を経て、菅原一秀氏は「強制起訴」されるのです。

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