『青天を衝け』渋沢栄一が生涯をかけて貫いた「経営者の在り方」とは

The statue of Shibusawa Eiichi in front of Fukaya station in Fukaya city, Saitama, Japan. December 13, 2020
 

論語と算盤

『論語と算盤』を読んでみると、この書物は論語の解説本ではありません。ですから、論語の文章はそれほど多くは出てきません。むしろ、渋沢翁自身の考え方が述べられた本と言っていいです。そして、「経営者のあり方」がその中心になっています。

この本で言おうとしていることは、つまるところ、経営は自社や自分の利益のためにするのではなく、社会の利益のために行うものだということです。明治の世に、このようなことを言う人は素晴らしい。今の世にさえ、このような考えで経営をしている人はそれほど多くはないでしょう。これは、やはり『論語』の影響です。

実は、『論語』には為政者のあり方が書かれています。どのような君主、どのような政治家になれば国民が幸せになるかということが書かれたものです。そして、その言葉を現代にあてはめると、政治家だけでなく経営者にも通じる内容になっています。ですから、渋沢翁は論語と経営者のあり方を結びつけたのです。

そこで、『論語と算盤』にある『論語』のことばを一つ紹介します。

富と貴きはこれ人の欲する所なり。其の道を以ってせずして之を得れば処(お)らざるなり。貧と賎とはこれ人の悪(にく)む所なり。其の道を以てせずして之を得るも去らざるなり。

この言葉は、

「誰もが裕福になりたいし、地位を得たいと思うものである。ただし、徳性と才能をもって得られた財や地位でなければそこにあぐらをかいてはいけない。そして、人は誰しも貧乏はいやだし、賤しい身分にいたいとは思わない。ただし、道徳をもって努力したのにもかかわらず、貧しくなったり賤しい身分にいるのならば、それから逃れようとしないことだ」

という意味です。

『論語』は富や地位を求めてはいけないとは言っていません。正しい考え方と正しいやり方で富や地位を得よと言っています。ですから、渋沢翁の『論語と算盤』になるのです。

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