渋沢翁の言葉
そして、渋沢翁は自分の言葉でこう言っています。
富を先にして道義を後にすれば、金銭万能のごとく考えて、大切なる精神上の問題を忘れて、物質の奴隷となりやすい。
富豪といえど自分独りで儲かったわけではない。言わば社会から儲けさせてもらったようなものである。
だから、社会に利益を返すのが経営者の務めだと言っているのです。本当に素晴らしい考え方ではないでしょうか。
渋沢翁の経営者に対する言葉をもう少し拾ってみます。
人の禍は多くは得意時代に萌(きざ)す。
絶頂期には心を引き締めなければ失敗するということですね。
事に当たりて奇矯に馳せず、頑固に陥らず、善悪を見分け、利害得失を識別し、言語挙動すべて中庸に適う。
素直な心で物事を見よ、ということでしょう。
勉強の心を失ってしまえば、その人は到底進歩発展するものではない。
経営者も勉強しなくなったらおしまいだと言っています。また、勉強熱心な従業員が多ければ事業がうまくいくということです。
ただし、理論や理屈だけではダメで、学んだことを実践してこそ意味があると渋沢翁は指摘しています。
競争には善意競争と悪意競争の二種類がある。善い工夫をなし、知恵と勉強をもって他人に打克つというは、これすなわち善競争。他人の事業への世間の評判が良いから、これを真似てかすめてやろうと側(はた)の方からこれを侵すのは悪競争。つまり、妨害的に人の利益を奪うというのが悪意の競争である。
競争にも良い競争と悪い競争があるということですね。現代では、どちらの競争が多いでしょうか。そして、あなたの競争はどちらでしょう。
いかがでしょうか。まだまだ紹介したい言葉はありますが、これくらいにしておきます。あとはご自分で体感してみてください。
■今日のツボ■
・渋沢栄一翁の「論語と算盤」は、経営者のあり方を書いたもの
・経営者は、自分の為だけではなく、社会のために利益を追求する
・経営に必要なのは、正しい考え方と正しいやりかたである
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