稲盛和夫が社員を「金の人材」に変身させるため毎日かけた魔法

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京セラの稲盛さんが、前職でセラミックに取り組んだときの話で。後に京セラの創業メンバーとなる人が入ってきたとき、意欲を高めるために“毎晩”こんな話をしてしていたそうで紹介します。

「皆さんは、日がな一日、粉をこねたり、形をつくったり、焼いたり、削ったり、単調でつまらない仕事だと思っているかもしれませんが、いまやっている研究は、学術的に意義のあるものです。東大、京大でもこの酸化物の焼結という実用研究には手を出していません。世界中でも1、2社しか取り組んでいない“最先端の研究開発”です。これが成功すれば『さまざま製品に使われ、人々の暮らしに大いに貢献する』ことになります。そんな社会的に意義ある研究開発が成功するかしないかは、皆さんの日ごろの働きで決まるのです」

“成果中心”のマネジメントを行う企業経営者に共通するのは、自社の「世界に“貢献できる”また“する”ミッション」を、経営者が明確かつ頻繁にあらゆる機会をとらえて語り掛けることです。

ところでこの経営者の働きかけなのですが、何も現代経営学でのものではなくて、古来有能な指導者が立派に統治を行う普遍的な術です。その普遍性であることを知るために、古典「マキャベリ」から聞きます。ここで述べている言葉はその時代のことなので、軍隊は企業とし、兵士を社員もしくは従業員としていただきます。

軍隊の指揮官でさえ、話す能力に長じたものがよい指揮官になれる。単に軍規を守られるだけならば、大した能力は必要ない。そして、それだけ、多数の人間の集合体である軍隊を手中に収めることはできない。むやみに厳罰でのぞむよりも、彼らに向かって説得したり鼓舞したりしたほうが、効果が大きいのである。それゆえ、自分の思うところを充分に伝えることのできる話術が必要とされるのだ。

金銭で傭うことによって成り立つ傭兵制度が、なぜ役立たないのかの問題だが、その理由は、この種の兵士たちを掌握できる基盤が、支払われる給金以外にないというところにある。これでは、彼らの忠誠に期待するには少なすぎる。彼らがその程度のことで傭い主のために死までいとわないほど働くと期待するほうが甘いのだ。だから指揮官に心酔し、その下で勇敢に立ち向かうほどの戦闘精神は、自前の兵士(同志)にしか期待できない。

実に、稲盛さんが成していたことは「マキャベリ」が唱える指揮官(経営者)が、兵士(社員)をして“勇敢に立ち向かうほどの戦闘精神”を持つ人材へと変身させ得る普遍的な働きかけなのです。「自分たちを守る」「一番になる」「他に貢献する」「誰もしなかったことをやり通す」「成長する」の“価値観”こそが源泉力なのです。

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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