公言した開始日を守るため、最優先の医療従事者等の接種も終わらないうちに高齢者へのワクチン接種が始まったのを皮切りに、予約を巡る混乱、“早打ち首長”の言い分への批判と擁護、大規模接種センターの虚偽予約や二重予約と収まらない「ワクチン狂騒曲」。こうした事態に、本来あるべき姿を説き、対応策を提示するのは、メルマガ『石川ともひろの永田町早読み!』著者で小沢一郎氏の秘書を長く務めた元衆議院議員の石川知裕さんです。石川さんは、今後もワクチン接種が続くことを考えれば、英国に倣い、医療ボランティアを打ち手にできるよう政策転換の必要性を訴えています。
ワクチン接種の優先順位を変えるべきだ/“早打ち首長”はブータン国王を見習え
「僕の失敗です」。ワクチン接種を巡る混乱について担当大臣の河野太郎氏が謝罪した。失敗しても強弁を続ける大阪府知事よりは殊勝な態度と言いたいが、十分な準備期間があったにもかかわらず、なぜ混乱を防げなかったのだろうか。
まず、接種希望者に対してワクチンが足りていないのだから、全員に接種予約券を配ったら予約が殺到することくらい分かっただろう。政府からは自治体に指導していたというが、完全に失敗である。腱鞘炎になるくらいに電話をかけ続けている国民の不満は爆発している。
そもそも高齢者の親がいれば、70代、80代の世代がネット予約できないことくらい、なぜ分からないのだろうか。我が家は母が78歳。ネットは使えない。だからこそ分かる。
そしてもう一つ、自治体の首長が我先にワクチンを打っているのも首をかしげる。中には「司令塔として自分が倒れたらコロナ対策が止まってしまう」と強弁している首長もいる。仮にそうであるならば、事前に接種順番を市民、町民に示しておくべきだった。
ブータンのワンチュク国王は「自分は国民の皆様が終わってから打ちます」と宣言していたが、為政者はこういう姿勢が信頼を呼ぶのである。信なくば政策を市民に示しても響かないのである。
文句を言っても仕方がないので対応策を示したい。人口1万人以下の市町村は、ワクチンが届きさえすれば今後は混乱は静まっていくだろうし、大きな混乱は起きないだろう。問題は大都市である。そもそも、ワクチンを打つ順番は医療従事者が先だった。それなのに高齢者接種を始めたというアリバイ作りから混乱が生じているのである。
クラスターが発生している医療機関や介護現場の従事者は、年齢に関係なく先に打つべきだ。政府は自衛隊を活用することにしているが、これも二重予約の懸念がある。まずは、医療従事者や介護施設の従事者から優先的に打つべきである。そうすれば、65歳以下が圧倒的なので二重予約の懸念もないし、いちいち接種券を配布しなくとも事業所からの名簿で対応できるはずだ。
そして打ち手の確保だが、医大生や歯科医などに加え、一定の研修をした人間をボランティアとして投入すべきだ。英国では資格のない医療ボランティアが既に3万人以上も登録してワクチン接種をしている。日本人だってできるはずだ。ワクチン接種は今回だけではない。今後も続く可能性がある。今こそ次につながる政策転換をすべきである。
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