日本は欧米に騙されるな。バイデンの二枚舌「人権外交」が招く終末戦争

 

中東情勢を悪化させるバイデン大統領と政権の二枚舌

では、同じ人権侵害への懸念は、イスラエル―パレスチナ間の紛争に対しては使われたでしょうか?

答えは、残念ながらNOです。

特にアメリカを見てみると、中東政策に対する煮え切らないバイデン政権の態度が、対応の遅れと、国際協調への復帰を実質的に阻み、アメリカ外交の信頼性をさらに低下させることになっていると思われます。

そしてその状況をさらに悪化させる要素が、バイデン大統領と政権の二枚舌です。

中国に対しては、原理原則、特に人権擁護を前面に押し出した“人権外交”を進めて非難していますが、パレスチナ人の“人権”をことごとく踏みにじるイスラエルの行動は容認しているという、まさにダブルスタンダードです。

これについては、イスラエル内でも非難が出始めており、「自衛権という名の下の人権軽視は看過できない」と、国内政治におけるネタニエフ首相批判と相まって、現政権の方針と、その背後にいるアメリカの矛盾をあぶりだしています。

結果として、政権発足以来、同盟国との関係修復を急ぎ、中国脅威論を共通の盾として、対中包囲網の強化に邁進してきたアメリカが、国連安全保障理事会においては、イスラエル擁護という、また別の“アメリカ外交上の原理原則”に引っ張られて、対米包囲網を狭められるという皮肉に直面しています。

ここでも余談ですが、私も安全保障理事会対応をしていた際、非常に難解で苦しめられたのが、安全保障理事会における鉄則と言われている「イスラエル関係およびインド関係のresolution(決議)は成立しないか、出ても骨抜きにされる」というものでした。

今回は、またその隠れた鉄則が適用され、アメリカが他の14か国を相手に、その姿勢を堅持していますが、ここでもまた、人権原則適用におけるダブルスタンダードとともに、「基本的人権の尊重を謳う国連憲章とそのシステムの限界」を露呈する結果になっています。

つまり、国際協調と平和構築の理想は、強国の身勝手な政治的関心と現実によってゆがめられているという現実です。これは、国連設立から75年を経て、設立時とは全く違った世界の現実に直面しても、第二次世界大戦時の“現実”が無理やり強行されているという現実ともいえます。

結果として、世界の現実と理想の乖離が起き、国連不要論が再燃する結果になっているのでしょう。

人権原則適用における欧米社会、特にアメリカのダブルスタンダードが、本来働くはずのアメリカによるイスラエルの攻撃の抑止を不能にさせ、ネタニエフ首相に「アメリカは、イスラエルの攻撃を支持している」ということまで言わせる羽目になっています。国務省の担当官によると、「支持?いやしていない」とのことですが。

結果として、ネタニエフ首相のイスラエルは、これまでの空爆に加え、地上部隊をパレスチナ全土に派遣して総攻撃に近い態勢に入ってきていると言われ、その前にパレスチナ人の人権は完全に蹂躙されています。

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