日本は欧米に騙されるな。バイデンの二枚舌「人権外交」が招く終末戦争

 

崩れ去る欧米諸国の人権を用いた外交的な圧力

まず、【ミャンマー情勢】をめぐる外交的な働きかけでは、人権外交アプローチの限界が露わになりました。

ミャンマーで行われている蛮行については、見過ごすことはできません。国軍による市民への暴力、不当な逮捕・拘留・拷問の横行は、確実に人権侵害ですが、ミャンマーに影響力を持つ周辺諸国(ASEAN諸国)は、ASEANが掲げる【相互内政不干渉の原則】を堅持するため、ミャンマー情勢の迅速な収束と平穏化を願う声明を出しても、それ以上の介入は慎んでいます。別の言い方をすれば、見て見ぬふりとも解釈できます。

それはなぜでしょうか?

理由の一つは、それぞれが“民主主義”をうたいつつも、実際にはゆるーい独裁体制の政体がほとんどであることです。そして、どの国にも、もし国連的な基準で人権を当てはめると、確実に人権侵害にかかる問題は多く存在します。

ゆえに『自分(自国)のことを棚に上げて、他人(他国)のことを非難すべきではない』との共通認識が働いて、互いの内政的な問題には目をつぶるという慣例が存在しているのでしょう。

ゆえに、外から見ると、今回のミャンマー情勢の混迷は、ASEANの外交努力の失敗と見ることもできるかもしれませんが、もしかしたら、【内政不干渉】という、いわばAsian Valueを堅持した(徹底した)とも見ることが出来るかもしれません。

欧米社会や国連から、支援や投資(ある国はワクチン)というカードをちらつかされて、ASEAN首脳会談(@インドネシア)でミャンマー情勢の解決を模索しましたが、ASEANが切った“クーデターの当事者を招いて話を聞く”という試み、つまりミン・アウン・フライン総司令官をサミットに招待するという賭けは、見事な失敗に終わったと思われます。

必死に【これは国軍による統治を、ミャンマーの代表とみなすものでない】と言い訳していますが、イメージとしては、ASEANが手を貸す形で、国軍による統治を既成事実化してしまったと受け取らざるを得ないでしょう。これにより、国軍およびフライン総司令官による、市民に対する武力行使などが“正当化”されるという事態になっていると思われます。

余談ですが、もし“人権外交”の理念がきちんと作用しており、ASEANもミャンマー国内の情勢を本当に好転させるべく努力するのであれば、民主化を進めようとするスーチー女史の支持者および“統一政府”の代表も招いておくべきだったと思われますが、それはありませんでした。

国連およびミャンマーの民主化を後押ししてきた欧米諸国(日本含む)が強調する“人権”とそれを用いた外交的な圧力は、ミャンマー情勢の前にもろくも崩れ去ったと見ることが出きるでしょう。

どのような理由が考えられるでしょうか?

一つは、マハティール氏が(最近ではなく)首相を務め、東南アジア諸国のリーダー的な役割を担っていたころに掲げられたAsian Valueとそれをめぐる議論が再燃したと思われます。

言い換えると、人権などを口実にずかずかと他国の内情に土足で踏み入る欧米型の価値観と支配者意識に対して、疲れと反発が再度強まったといえます。今回のミャンマー情勢を前に、いろいろなASEAN諸国のリーダー層とお話しする機会に恵まれましたが、口々にこのような指摘をしていました。

今回、Asian Valueの提示という動きが再燃した背景には、習近平国家主席が掲げるOne Asia構想の理念が強く反映されているといわれています。

それを簡単にかいつまんでお話ししますと、「これまで長年にわたり、欧米諸国はアジアに対して自らの勝手な理念や価値観を押し付け、アジアを支配し、搾取してきた。その時代を今、決定的に終わらせないといけない」という内容で、「その旗手に中国はなるのだ」とした、2019年年初の習近平国家主席の発言に、かつてマハティール氏が掲げたAsian Valueの“遺産”を重ねるリーダーもいるようです。

その影響もあってか、“人権”の指摘は、欧米諸国が用いる支配とコントロールのための口実であるという思想が出来てきていると思われます。

このところ、目まぐるしく伸長している中国の総合的な影響力の拡大も背後にあるでしょうが、実際には、今回のミャンマー情勢への中途半端に見える干渉は、欧米からの期待をスルーして、自らの独自の価値観(Value)を貫いた結果と見ることが出来るかもしれません。

どちらにせよ、実情は、ミャンマー国民の悲劇の拡大となってしまいましたが。

ここで一つ強調しておかないといけないのは、国連も欧米諸国も、ミャンマー情勢を懸念し、ミン・アウン・フライン総司令官を非難する理由として“人権侵害への懸念”を用いたという事実です。

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