NHK連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」でお茶の間の人気を集め、大河ドラマ「徳川家康」に主演し俳優としての地位を不動のものとした滝田栄さん。そんな滝田さんといえば「仏像彫刻家」としても知られますが、何が滝田さんと仏教とを繋いだのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、滝田さんご本人が対談形式で「仏教との出会い」を語っています。
俳優・滝田栄さんがご登場
かつて大河ドラマ「徳川家康」で主役を務めた俳優の滝田栄さん。滝田さんはいま、俳優としての活動の傍ら、仏像彫刻や仏教の研究にも力を入れられています。
本日は、滝田さんと泰門寺住職・堀澤祖門さんの対談の中から、滝田さんが仏教に触れるきっかけとなった出来事についてご紹介します。
滝田 「僕は長い長い迷いの世界を彷徨いながら、『こういう生き方でいいのかな』という思いが自分の中で蓄積されていって、仏教とのご縁をいただいたように思います。まさに再誕というか、本当の自分を見つける道のりでした。最近になってようやく『あっ、これがそうだったのか』と分かり始めた感覚を得ているところです」
堀澤 「仏教とのご縁はどういうものでしたか」
滝田 「僕は1983年、NHKの大河ドラマ『徳川家康』で主人公の家康を演じることになりました。初めは歓喜したんですけど、いざ役づくりに入った時に、家康という人物がさっぱり分からなくなったんです。織田信長、豊臣秀吉、今川義元など他の武将はどういう人なのか、何をやったのか全部分かる。だけど肝心の家康だけは全く正体が掴めませんでした。
分からないと演じられませんから、もう一度、原作を読み返していた時に家康が竹千代と呼ばれていた少年時代、6歳から19歳までの間、今川義元の人質として太原雪斎禅師に預けられていたというくだりがあったんです。
雪斎禅師ゆかりの臨済寺(静岡市)に行けば何か分かるのではないかと閃いて、早速連絡をして、しばらく身を置かせていただきました」
堀澤 「何か分かりましたか」
滝田 「家康がこの寺にいた、この空気を吸っていたということ自体が感動だったのですが、家康がここで何を得たのかはなかなか分かりませんでした。その中で、これは一つの真実かなと思ったのが、修行僧が食事前に感謝の気持ちを込めて唱える『五観(ごかん)の偈(げ)』でした。そこには、この一杯のお粥をいただけるだけの行いをしているのか、この料理をつくった人の気持ちを考えてみなさい、自分以外の人のためにどれほどのことをしているかよくよく考えてみなさいといったことが書かれてある。
竹千代も食事の度に、この『五観の偈』を必ず唱えていて、それを身につけていたはずだと思いました。実際、家康は生涯にわたって一汁一菜なんですね。それで人生50年と言われていた時代に75歳の長寿を全うしている。しかも、亡くなる前、大名たちを集めて『天下は万民のためのものだ。上に立つ者は決して贅沢をしてはいけない』と戒めているんです。これはその一例ですが、このように家康という人物はよくよく人の気持ちを知り、自分たちが生きる意味を学んでいる。贅沢と栄華を極めようとする他の武将たちと比べると、全く生き方のテーマが違うことに気づいたんです」
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