余りに酷い無理解。JR東海「リニア新幹線」計画が大地を“虐殺”する

 

洗足池近くの直径40メートルの穴

リニアはJR品川駅を出てから川崎市を横切り東京都町田市を経て神奈川県相模原市に至るまでの37キロをトンネルで進む。そのうち町田市までの33キロが地表から40メートル位深の大深度トンネルで、これに関しては地上の地権者の同意や用地買収なしに地下深くを掘ることが「大深度地下使用法」によって許されている。その路線に沿って約5キロごとに立坑が掘られ、そこからトンネル掘削のためのシールドマシンが設置され作業員が出入りし、完成後は換気口、兼、乗客用非常口に使われる。

東京都大田区の東急洗足池駅近くの住宅地の真ん中には、直径40メートルの巨大な穴が開いていて、これが品川を出てから2番目となる「東雪谷非常口」。警視庁官舎の跡地を利用して4年前から工事が始まり、今後90メートルの深さまで掘ってコンクリートの筒を作る予定である。大田区には呑川という2級河川があり、それと洗足池は一部暗渠の用水で繋がっており、また相模川と酒匂川を水源とする川崎市の水道の2本の導水管も近くを通る。さらに住宅地だから当然、上水道、下水道、ガス管、通信ケーブルなどが混み合っていて、場合によるとそれらが交差していたりもする。非常口とトンネルの工事、運行開始後のリニアの振動などで水脈が断ち切られ、地盤が緩み、管類が破損する危険は計り知れない。

6月初めにJR東海が品川区で開いた住民説明会では、東京外環道路の大深度トンネル工事による住宅地の予想外の陥没と同じことが起きるのではないかに関心が集中したが、JR側は「安心・安全」を繰り返すばかりだった。

自宅の16メートル下をリニアが走る?

品川からずっと大深度で進んできたトンネルは、相模原市に入って浅くなり、地下13~35メートルを通る。JRと京王線が交差する橋本駅前では、一昨年まであった県立相原高校の跡地3,200平米に品川の次の「神奈川県駅(仮称)」の建設が始まっている。土留壁を打ち込み、用地を幅50メートル・長さ1キロにわたって露天掘りし、駅を造って埋め戻すという大工事。これが地下水を堰き止め地番沈下を引き起こすのではないかということが住民の最大の心配である。駅から100メートルに住む男性の場合は、自宅の真下16メートルをリニアのトンネルが走る。地盤沈下だけでなく、列車が通るたびに振動が伝わって怖くて住んでいられないのではないか。

そこから15キロ離れた山間地の鳥屋地区には、最大幅350メートル、長さ2,000メートル、面積50万平米の車両基地の建設計画もある。山を削り谷を埋めて標高270メートルの台地を造成する「万里の長城か?」とも思える工事ぶりが山の生理を破壊する上、その基地で毎日319トンの水を使って洗車し、その洗剤混じりの汚水を近くの串川に流すつもりらしい。その串川は一昨年10月の台風19号では溢れ、住民が避難した。住民らはそれらの不安について納得のいく回答が得られるまで、測量に応じないとしている。

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