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カギとなるASEAN各国の立ち位置と独仏両国の覚悟の度合い

そこで今、カギを握るのが、ASEAN各国の立ち位置です。軍事的には、どこも中国の脅威に曝され、中国による横暴な領土拡大欲に恐れおののいているところですが、これまで口約束ばかりで中国から守ってくれなかったアメリカと欧州各国への不信感が募っている状況です。

コロナウイルス感染拡大を受け、米(欧州)と中国の間で対応に差が顕在化する中、経済的な連携の拡大と強化、債務の軽減、投資拡大、インフラ事業の拡大、そしてワクチンの供与という多重的な支援のオンパレードで畳みかけ、ASEAN内でくすぶる対中脅威感情に風穴を開け、対中包囲網に綻びをもたらそうと、活発な働きかけが行われています。

そのASEAN各国に対して、どれだけ信用が高いサポートを行えるかが、アメリカとその仲間たちの陣営にとっては運命の分かれ目になるでしょう。

このパーツにおいては、確実に日本の果たす役割は大きいと考えます。

日本はクアッドのコアメンバーで、自衛隊も軍事協力の一翼を担っていますが、クアッドも、大西洋におけるNATOのように、軍事・安全保障に加えて、情報や経済などのソフト分野での連携も高める方向性が考えられる中、いかに多重的に迅速な対応ができるかが重要でしょう。これまでのところ、個人的な意見ですが、日本が不得意だと思われる部分ですが。

もう一つのカギは、EUの中でも独仏両国の覚悟の度合いでしょう。香港国家安全維持法施行を機に、中国離れを演出し、アメリカ主導の対中包囲網への参画を明らかにした両国ですが、日米(豪)とは対応に温度差があり、中国にとっては、包囲網を決定的に崩したいのであれば、攻めどころは独仏になります。

人権問題(ウイグル自治区、香港など)を盾に中国批判の輪には加わるものの、これまで高め続けてきた中国経済への依存が、両国の経済発展のエンジンに組み込まれており、そこにアフターコロナの世界経済において、一刻も早い回復を遂げ、かつ主導権を取りたいと画策する独仏にとっては、アメリカと日本に先んじるためには、中国との経済協力の維持・強化が最も手っ取り早い手になります。

それに気づいている中国は、盛んに高官を派遣して関係の修復と強化に勤しんで巻き返しに躍起です。欧州各国(特に独仏)は、表向きはEUの方向性に沿って、人権問題を対中国カードに持ち出して非難していますが、アメリカ・バイデン政権が強化する方向の対中経済制裁からは距離を置き、明らかな温度差を露呈しています。

この秋に退任するメルケル首相も、人権問題については強い非難をしてきましたが、経済的な対中制裁に話が及ぶと、いつもきまってトーンダウンするか、議論の輪からフェードアウトしてきました。この姿勢は、おそらく次の政権のトップが誰であろうと、継続するでしょう。

マクロン仏大統領にとっても、弱り続ける支持基盤と支持率に直面し、再選は不可だろうと言われている中、起死回生の逆転ホームランを打つためには、彼が失敗し続けた経済刺激策を打ち出す必要があり、それには中国(経済)との密接な関係が必要とされています。

ゆえに、独仏共に、期待されているほど、中国に対して強くできない事情があり、そこにアメリカ主導の対中包囲網の欠点が見えるのではないかと思います。

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