西村大臣はハメられた?異常な「飲食店脅迫」裏に二階・小池の影

rp20210713
 

酒類の提供停止養成に応じない飲食店に対し、金融機関を通じた「締め付け」を示唆した西村経済再生担当相。批判噴出によりすぐさま撤回されましたが、この発言がさまざまな憶測を呼んでいます。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、次期衆院選を巡り、永田町の水面下において「かなりのレベルの暗闘」が繰り広げられていると推測。その結果として西村大臣は「罠にはめられた」と見ることが一番自然であるとしています。

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どうにも不自然な飲食店脅迫事件

西村康稔経済財政・再生大臣(何とも奇妙な肩書きですが)は7月8日夜の記者会見で、「休業要請に応じない飲食店の情報を金融機関に提供する」という考えを明らかにしました。要するに、政府が飲食業界に対して法的な根拠もなければ、世論の支持もない「脅迫行為」を行なったということです。

つまり、緊急事態宣言下でも、酒類を出すにもかかわらず休業しない店については、銀行から融資ストップなどの圧力を加えて欲しいということのようです。しかしながら、そもそも宣言を無視して酒類を提供する店というのは、ボロ儲けをしようというのではなく、休業したら家賃や人件費などで潰れてしまうので、仕方なしに営業するという店が多いと考えられます。

ということは、銀行としたら「あの店は違反しているから融資を止める」などという行動に出た場合には、最悪の場合にその店は倒産してしまいます。店が倒産したら、融資は回収できないので「事故」つまり銀行としては損失になります。ですから、銀行としては苦境に立っている店について、最後に首を絞めるようなことをしたら、自分の首が締まってしまいます。

いやいや、東京の場合は、大手銀行が多いから大丈夫、そんな発想を西村大臣がしていたとしたら大間違いです。零細な飲食店の場合は、都内でも地銀や第二地銀、信金、信組といった金融機関が取引先です。西村大臣は、要するに彼らに飲食店を追い詰めよと言っているのです。その無謀性、非人道性以前の問題として、経済ということを全く知らない発想として言いようがありません。

これに加えて、西村大臣は酒類を販売する事業者にも要請に応じない飲食店と取引しないよう求めたようです。と言いますか「ようです」などというレベルではなく、ちゃんと酒税徴収の監督官庁である国税庁から「圧力文書」が公式に発せられているのですから驚愕(現時点では取り下げたようですが)です。

こちらも酒屋、酒問屋の苦境を理解しないで、横暴な権力を振りかざしているのですから始末が悪いと言えます。

この2つの「事件」ですが、どうにも不自然です。

とにかく、冷酷なイメージの西村氏にしては余りに稚拙だからです。ですから、「うがった」見方をするのであれば、経産省出身の西村氏を「罠にはめる」ための金融庁系のアクションという説明は可能です。想像を逞しくするのであれば、ポスト菅に向けて、「2F派による小池マジック」戦略というのは、もしかすると清和会潰しであって、具体的には安倍潰しであり、まずは安倍直系の西村大臣が狙われたという可能性があるかもしれません。

もっと言えば、自公の衆院議員の多くは「このままで選挙が戦えない」という理由から、「総選挙は小池で」という計算を始めているかもしれないのです。菅総理は、基本的には自分で解散して続投する構えですが、場合によってはフルの総裁選を9月にやって結果として小池に禅譲するという可能性もあるのではないでしょうか。

一方で、そんな「西村潰しから安倍潰しへ」などという複雑な話ではなく、内閣官房も絡んだ「統治アマチュア」を露呈した壮大なオウンゴールというように、素直に見ておく必要もあるかもしれません。ただ、これも常識的に考えて、かなり無理筋です。いくら「宣言の実効性を担保」できるかどう「かしら?」と小池百合子にチャレンジされたからといって、ここまでの自爆行為に追い詰められるというのは、非常に不自然だからです。

やはり、清和会と2F派の暗闘、10月総選挙への党内の異常な危機感、そしてもしかして菅総理の続投意欲が「枯れてきている可能性」などを勘案すると、水面下における暗闘はかなりのレベルになっており、その結果として西村氏は「罠にはまった」という見方が一番自然であるように思います。

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