ホンマでっか池田教授が「感染症は人間と友達になりたい」と語るワケ

 

そう書くと、この頃の人々は、感染症の恐怖に悩まされることもなく、健康で長生きできたと思う人もいるかもしれないが、前記の肺炎や破傷風ばかりでなく、食物不足による餓死や怪我で亡くなる人も多く、平均寿命は20歳に満たなかったと考えられている。

農耕を開始して集団の人口が増え始めると、感染症の病原体にとって、人類は感染する価値のある対象となる。人類を今でも苦しめている人型の結核菌は5000年から1万年くらい前に誕生したと言われている(青木正和『結核の歴史』講談社)。

人型の結核菌は牛型結核菌から進化したらしく、牛の家畜化が進み、牛乳を摂取することにより、少なからぬ数の小児が牛型菌に感染して、この菌が人の体内条件に適応的に進化して、人型菌になったようだ。病原体にとっては、人口が多い人類を宿主とすることができれば、細菌やウイルスの存続に極めて有利なため、虎視眈々と地球上で最大の感染市場を狙っているというわけだ。感染症は人類を友達にしたくて仕方がないのだ。

世界中が交通網で結ばれている現代社会では、何かの加減で新しい感染症が現れて(ウイルスの場合はエマージングウイルスと呼ばれる)あっという間に全世界に拡がっていくことがある。新しい感染症に対しては、人々はまだ免疫を持っていないので、感染は爆発的になり、パンデミックを引き起こすことになる。

image by:Dion Karnegi / Shutterstock.com

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