小池知事“二階派乗っ取り”で自民総裁就任か。盆明け政局の有力シナリオ

 

今後のシナリオですが、9月に総裁選があるとして、五輪の片付けとパラを乗り切ったら巷間噂されているように小池が志帥会(二階派、物騒な名前ですが)を乗っ取って総裁になって総選挙で政権を固めるか、小池が断念した場合には岸田でしょうか。岸田政権の場合は、福田康夫政権程度で終わる感じもしますが、さてどうでしょうか?

一部には小池以外の女性宰相への期待がありますが、高市早苗はここでいうところのベースがなさすぎてダメ、野田聖子は関係者にスキャンダルがあり難しいようです。稲田朋美はイデオロギーを少し右に寄せたのは評価できますが、やはりベースとなる「観」となると怪しさ満点です。

では、野党勢力はどうかというと、仮の話ですが共産党が私有財産を認め、自由経済を認め、党内民主主義を認めて改名して、大きな政府と相当強めの平和主義、相当強めの環境政策、相当強めの再分配をやることで、立憲から自民の党内左派などを糾合すれば、衰退国家に相応しい一つの軸にはなると思います。それすらもできないのであれば、政権担当の意思を認めることはできません。

そんなわけで、日本の政治のことを考えると暗澹たる思いがします。勿論、アメリカの場合もバカバカしい「分断」があり、現在では「バイデンの民主党とトランプの共和党」の戦いだけでなく、民主党内における左右両派のバトルも激しくなってきました。

ここへ来てNY州のアンドリュー・クオモ知事の「セクハラ疑惑」の風圧が激しくなっていますが、背景にあるのは民主党内の中道派であるクオモへの「追い落とし」です。

ですが、アメリカの対立構図には日本とは大きな違いがあります。まず、どのグループも政権担当能力があるということです。また、政権を担ったら何をするかという政策プログラムも持っています。その上で、大ゲンカはしても妥協点を探ることはできるわけです。また有権者も(多くの場合は浅い考えであるにしても)支持政党があり、政策に対する賛否は一応に持っているということがあります。

アメリカには確かにひどい対立があるわけですが、少なくとも大統領制とか、上下両院の制度への不信というのはありません。上院議員100名の権力は、依然として大きいし、トランプ時代を経たと言え大統領の権限も不変です。その意味で、アメリカの政治システムが崩壊するということは考えにくいわけです。

ですが、日本の場合の危機というのは、非常に難しいところへ来ているように思います。これは総理大臣に人を得ないから起きている危機というよりも、国全体に危機が進行していることから、政治家や総理大臣に人材が集まらなくなっているということだと思います。

危機というのは、国のかたちの変化です。

明治以来の日本というのは、それこそ三酔人経綸問答で中江兆民が戯画化したように、「洋楽紳士=理想主義の改革派」と「豪傑君=国粋主義から中国進出を主張」が対立する中で、最終的には「南海先生=是々非々主義のバランス派」が描く基本線に収まるという構図がありました。

勿論、その対立というのは健全に機能していたとは言えません。大正デモクラシーと普通選挙というのは、治安維持法と裏返しでしたし、政友会と民進党の対立構図も後半になると「右派ポピュリズム」の煽りを競うようになって半端な軍事政権の到来を許すようになりました。その軍事政権にしても、明治の先人が攘夷の不可能を見るや開国に転じたほどの愛国心はなく、利己心から国を破滅させるという愚を犯すに至っています。

戦後の左右対立も、対米従属派が枢軸の名誉回復を狙ったり、格差是正がどういうわけかスターリンの全体主義国家を認めたり、ひどい迷走となっていました。ですが、どんなに迷走的な対立であっても、対立は大真面目であり、何らかの大義なり、中長期の夢なりを持っていたのでした。

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