韓国とは対象的な結果に。なぜ日本のアフガン救出作戦は失敗したのか

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タリバンが権力を掌握したアフガニスタンから日本人と日本人の協力者を救出する作戦は、自衛隊輸送機の到着直後にテロが発生した影響もあり、思ったような成果を上げることができずに米軍の撤退期限を迎えてしまいました。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川さんが、前回「遅すぎた日本の自衛隊機アフガン派遣。決心のできぬ政府が国を滅ぼす」と案じたままの結果に終わったのは、ただ派遣が遅かっただけに留まらない根本的問題があるようです。小川さんは過去の失敗を平気で繰り返してしまうこの国の統治機構の有り様を嘆き、国の行末をますます憂えています。

アラブの春を教訓にしていない日本政府

せっかくアフガニスタンに自衛隊機を3機も投入したのに、そのまわりを固めていなかった結果、思ったような成果が上がっていないのは残念な限りです。

政府がC-2(1機)とC-130(2機)の自衛隊輸送機を出発させたのは、15日にアフガンの政権が崩壊した8日後の23日になってからでした。自衛隊機は命令が出れば即応できる態勢にあるのですが、政府の決心が遅れに遅れたからです。その結果、26日に旧アフガン政府関係者14人、27日に日本人女性1人を隣国パキスタンに出国させるにとどまっています。

政府の決心の遅れとともに、カブール空港までの移動について手を打っていなかった問題は大きいと思います。明らかに日本政府の失態です。

今回は出国希望者がカブール空港に詰めかけて身動きできない状態だったところに爆弾テロが発生し、日本人女性が空港まで自力で移動できたのが奇跡と思われるような状況でした。これではいかに自衛隊が迅速に現地入りしようとも、そして、自衛隊の誘導部隊が空港の外で活動できるように法改正が行われたとしても、どうしようもありません。

日本と対照的だったのは韓国です。25日の段階で国民と関係者390人全員を出国させるのに成功しています。韓国政府はアフガンの政権崩壊直後に輸送機と特殊部隊を現地に向かわせると同時に、現地の大使館員が米軍と交渉して米軍が押さえていたバス6台に350人あまりを乗せて空港まで運びました。米軍のバスはタリバンとの合意で空港との間を移動できることになっており、韓国側は米軍人をバスに同乗させてタリバンの検問所を通過したのです。

これが可能になったのは、韓国大使館が自国民と関係者の現状を把握し、連絡網の構築と避難訓練を怠らず、集合場所なども明確になっていた結果です。ほとんど把握していなかった日本大使館とは雲泥の差があります。

日本の危機管理を見ると、現地駐在の社員と家族ばかりでなく、現地従業員の現況を把握することが形式に流れている例に事欠きません。きちんと把握している状態とは、連絡を取るべき全員に通知を発信した場合、1時間以内にアンサーバックがある状態で、それを義務づけることから始めなければなりません。避難・脱出の訓練も、ルートと手段について幾通りもの代替案を準備し、繰り返し実動訓練を重ねておかなければなりません。

2011年3月、アラブの春に揺れるリビアから中国政府は自国民4万2600人を10日間で安全地帯に脱出させました。空路や海路だけでなく、大部分の中国人は使える陸上交通手段によって国境を越えることを最優先させたのです。韓国も1400人が脱出しました。このとき日本政府は23人の在留邦人を脱出させられませんでした。同じことを繰り返す日本。コロナ対策も大丈夫なのか心配になります。(小川和久)

image by:viper-zero / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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