ホンマでっか池田教授が嘆く「平等原理主義」の病。被災地で毛布が配れぬ実害も

 

今回のオリンピックに参加したニュージーランドの女子重量挙げのローレル・ハバード選手はMTFであるが、「大会の一年前からテストステロン値を基準以下に保つ」というIOCの決定に合格したので、女子選手としての参加が認められた。男子と女子のどちらのオリンピックに参加できるかの基準をテストステロン値にすると、今度は生まれつきテストステロン値が高い女性が、テストステロン値を下げない限りオリンピックに参加できないという事が起こる。先天的にテストステロン値が高い、南アフリカのキャスター・セメンヤ選手は、陸上の女子800メートルでオリンピック2連覇中であったが、テストステロン値を下げる薬を服用せずに、東京オリンピックへの出場を禁じられた。

一方で、IOCはドーピングを禁じているが、テストステロン値を下げる薬を飲むことはドーピングにはならない、というのはご都合主義の感は否めない。いっそのこと、オリンピックは男女別をやめてノンバイナリー(性別無視)でやればいいとも思うが、するとメダルを全く取れなくなった女子選手から文句が出そうだね。

いずれにせよ、権利や義務の平等は、同格の個人の集団内でしか成り立たない概念なので、同格であることを決めるメルクマールが決定的に重要になってくる。交通事故でイヌやネコを轢き殺しても刑事上の罪はなく、せいぜい器物損壊罪で、損害賠償を支払うだけで済む。たとえ、飼い主が自分の命の次に大切だと思っていても、イヌやネコは人間と同格な存在ではないので、これは止むを得ない。もちろん、動物にも生存権はあると主張する人もいるが、そう主張する人でも細菌の生存権を擁護する人はいないようなので、動物と細菌は同格の存在とは思っていないのであろう。

同格の個人の集合で一番わかりやすいのは任意団体であろう。例えば学会は学会費さえ支払っていれば、平等な権利を与えられる。学会の役員の選挙権や被選挙権、学会誌の頒布などの権利は、学会員であれば平等である。但し金の切れ目は縁の切れ目で、学会費を一定期間納めないと退会になってしまい、一切の権利を失うことになる。尤も、学会は本人が好きで入っているので、それで不公平になることはない。

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