子どもとの交渉も心を発達させる
反抗期には、親に聞かれてもろくに答えないくせに、欲しいものは欲しいと言ってくる。そのときも「ふざけるな!!」などと完全否定や門前払いをしてはいけない。
例えば、「○○のスニーカーを買ってほしい」と言ってきたとき、「そんなもの買わないよ」とか「スニーカーならこの前買ったばかりだろう」と門前払いを食わせないことだ。
まずは話を聞いてやる。
「どんなスニーカーなんだ?」あるいは「あれは確かにカッコいいね」などと受容と共感を示し、「どうしてそれが欲しいの?」と理由を聞くことだ。その上で、必要だと思えば、買ってやればいいだろうし、必要ないと思えば「まだ、いま履いているスニーカーが使えるのだから、買うわけにはいかない」と拒否する。
門前払いもいけないが、子どもに媚びを売ることもいけない。断ると、より反抗的な態度を示すかもしれないが、親として壁のように立ちはだかり、主張を通すことは重要である。
反抗期であろうとなかろうと、親の考えや価値観をはっきりと示す。そうしないと、子どもは反抗する機会を失い、逆に親や世の中をなめるようになる。
頭から拒絶して強圧的に考えを押しつけるのではなく、話を受容的・共感的に聞いた上で、親の主張を冷静に伝えることだ。
それでも、「欲しい」と言ってきたら、今度は親子の交渉である。ここはお父さんの出番だ。子どもと交渉し、妥協点を見つけていくプロセスは社会に出るための重要な勉強である。
「スニーカーがどうしても欲しい理由」をさらに説明させたり、条件を付けたり、「次にスニーカーを買うときには欲しいものを買う」ことを約束したり、お互いが主張して、相手の言い分を受け入れつつ、話し合いをする。こうした大人らしい態度が子どもの反抗期を有意義に生かし、子どもの心を発達させるのである。
ムキになって子どもといっしょにケンカせず、親としての大きさを子どもに見せてあげるチャンスこそ反抗期だ。
初出「親力養成講座」日経BP 2007年10月19日
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