絶対に子どもに言ってはいけない言葉
それでは、いじめが発覚したときに親としては何をするべきだろうか。
まず、子どもに絶対言ってはいけない言葉がある。
- そんな弱いことでどうする?
- 勇気を出せやられたらやり返せ
- いじめられるお前にも問題があるんじゃないか?
- お前がはっきりしないからいじめられるんだ
特にお父さんたちはこうした言葉を子どもに投げつけがちだが、それができれば子どもも苦労しない。できないから、悩んでいるのだ。
このような言い方をするのではなく、まず受容的、共感的に話を聞いてやることが大切だ。子どもは話すだけでもストレスをある程度解消できる。
親はアドバイスや説教をしたくなるかもしれないが、ぐっとこらえて、子どものストレス解消に努める。話を聞いてやって、好きな遊びをゆっくりさせてもいいし、休日に遊園地に連れて行ってもいい。家庭ではくつろげるような環境を作ってほしい。
次に担任に事実を報告する。緊急の時はすぐ電話で伝え、さらに約束して学校に話し合いに行く。その際、ちゃんとした服装で行くことだ。買い物帰りのような格好では、真剣味が伝わらない。できれば、夫婦で出かけた方がいいだろう。
問題が深刻だったり、学校側の対応が遅い場合は、クラスの親や学級代表と一緒に話し合うが、その際は担任だけでなく校長、副校長、生徒指導主任なども同席してもらった方がいい。
いきなり、怒鳴り込む親もいるが、それは子どものためにならない。けんか腰で行くと、学校側は守りに入り、出すべき情報も出さなくなる。だから、一緒に問題を解決しましょうという姿勢が大切である。
もし、顔すら合わせたこともないようだと教えてもらえないかもしれない。だから、母親でも父親でもクラス内のネットワークは大切だ。
「一人でいる力」を身につけさせるのもいじめ対策
いじめが起きたときにお父さんたちにやってもらいたいことは、冷静に対応することだ。
まずは、子どもに「いじめからお父さんが守り抜いてやる」ことを伝え、情報をできる限り集めて、対策を考える。仕事ではいくら相手に非があっても、すぐにけんか別れはしないだろう。冷静に学校側と話し合って、解決策を探ることだ。
友だちをいじめる子どもの多くは親子関係に問題がある。その改善について学校が指導していくことも大事だ。
一方、ときには、いじめを受ける側にも「いじめを受けやすい要素」がある場合もある。いじめられる側に「原因も非も責任もない」のは当然のことであるが、見た感じや振る舞いや態度面などでいじめを受けやすい要素があることもあるのだ。
お父さん方はそれを客観的に見つけて、改善した方がよければ改善に取り組むべきだろう。例えば、「不潔な感じがする」「イヤと言えない」「おとなしすぎる」「すぐムキになる」「冗談が通じない」などである。
もちろん、すぐに直そうとしても無理だし、それが子どもに苦痛になることもあるので、長い目でじっくり取り組むことが大切だ。
子どもはちょっとしたことで、相手をからかったり、バカにしたりするものだ。それを受け流せず、いちいちムキになっていると、いつの間にかいじめの対象になる。冗談やユーモアで切り返せるようになれば、子どもの心も成長するだろう。父親がそうした対応をロールプレーイングなどで教えてあげてほしい。
引っ込み思案で、おとなしい子は泊まり込みのサマーキャンプなどに思い切って子どもだけ送り出す手もある。塾やスポーツクラブなどに入れるのもいいだろう。学校以外や大人の中で自分の居場所を見つけることのできる子もいる。
いじめが悪質である場合は、転校も有効な手段だと思う。
最後に本コラムの1回目で書いた「一人でいる力」を子どもに身につけさせることも大切だ。
自分の世界や好きなことを持っていて、グループから離れて一人でも平気でいることができる子はいじめにも耐えることができ、いじめグループの仲間入りもしない。
「みんな仲良し」を真に受けず、子どもが好きな世界に没頭できるように親が手助けすることもいじめ対策の重要な一つといえる。
初出「親力養成講座」日経BP 2007年10月5日
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