現役小学校教師が警告「家に本が多い子供ほど成績が良い」の早合点

 

「家の本の数が多い」というのは、いかなる要素を含むのか。また逆に「家の本の数が少ない」というのは、いかなる要素を含むのか。考えられるだけでもたくさんある。

・親あるいは子どもが読書好き
・親あるいは子どもが勉強家
・家庭内が、誰でもいつでも本が読める環境にある
・親あるいは子どもの知的好奇心が旺盛
・家庭に経済的な余裕がある
・大きな本棚を置くスペースがある
・親の教育への関心が高く、通塾率が高い

……

まだまだ色々あるが、この結果から考えられる要因は、本そのものというよりも「親」や「家庭環境」の中にありそうである。ここで調べられる学力はテストの点数である以上、塾や通信教材を用いた家庭教育における学習量は影響が大きいはずである。つまり、色々推測できる要素が多すぎて、これだけでは何が要因なのだか、さっぱりわからない。それを特定して調べていく作業が、研究である。
気の遠くなるような作業である。現場で教員をやりながら研究することの難しさはここにもある。

ただ一つ現時点での事実は「家に本が多い家庭の子どもほど平均正答率が高かった」というデータの結果だけである。

成功にも失敗にも、様々な要因が絡む。「たまたま」上手くいっただけかもしれない特殊な事例を取り上げて「これで大成功!」とはいかない。例えば「ほめてはいけない」論も「叱ってはいけない」論も、どういう状況でどんな子ども相手なのかに左右される。結果の要因として特定するには、他のあらゆる要素を除外しないと、そうだと言い切れない。

親自身の子ども時代の成功事例を、自分の子どもに当てはめて成功できるかどうかは、別問題である。誰かがたまたまどこかで上手くいった子育てメソッドのようなものもそうである。宝くじでたまたま3億円当てる人が世の中に必ずいるが、その人と同じ売り場で同じように買っても当たる訳ではない。失敗について考える場合も同じである。

要は、データはあくまでデータとして見ること。きちんと多くのデータから平均値をとったものであっても、要因自体は特定できない。たまたまそうなった特殊な一事例については、単純に一般化することができない。センセーショナルな見出しには特に注意である。二つの事柄に相関があっても、それを要因と早合点しない視点を常にもつことが大切である。

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