トランプとの会談で占めた味。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すワケ

ktn20211020
 

9月だけでも6発、10月19日には新型と見られるミサイル発射訓練を行った北朝鮮。なぜ金正恩総書記は、国際社会からの非難殺到が容易に想像できるこのような暴挙を続けるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、容易に理解できる「2つの法則」でその意図を解説。さらに日本が北朝鮮に対して取るべき方策を提示しています。

相次ぐミサイル発射、北朝鮮の意図は【二つの法則】で理解できる

北朝鮮は10月19日、日本海にむけてSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射しました。北朝鮮のミサイル発射がつづいています。9月だけでも、「鉄道発射式短距離弾道ミサイル」「極超音速ミサイル」など、6発のミサイルを発射しました。日本人は慣れてしまって、大騒ぎしなくなっていますが。

ところで、「北朝鮮の意図」は何なのでしょうか?今日は、北朝鮮の意図を超簡単に理解できる「2つの法則」についてお話しします。

法則1 ~ 核兵器は手放さない

法則1は、「核兵器は手放さない」です。

なぜでしょうか?

金正恩の目的は、自分自身と北朝鮮を守ることです。仮想敵ナンバー1は、もちろんアメリカ。金正恩は、「核をもっているかぎり、アメリカも手出しできない」と思っている。実際そのとおりでしょう。

アメリカが北朝鮮を攻撃した。北朝鮮は、アメリカに届くICBMをすでに獲得したと宣言しています。ひょっとしたら、ウソかもしれない。しかし、日本や韓国を核攻撃することは、確実にできるでしょう。

金正恩が、「俺は死ぬが、日韓も地獄へ道連れだ」と考えたら?

それで、日韓を核攻撃すれば、少なくとも数十万人の犠牲者がでる。どんなアメリカ大統領でも、「大量虐殺の原因」になりたくありません。

金正恩と父親の故・金正日が「かたくな」になったのは、アメリカの「ウソ」が原因です。どういうことでしょうか?

03年、アメリカは、「フセインは大量破壊兵器を保有している」とウソをつき、イラク戦争を開始しました。これに恐れおののいたリビアの独裁者カダフィは03年12月、「核兵器開発をしていた」ことを認めたのです。そして、すべての情報をオープンにし、核兵器開発をやめました。欧米は、カダフィの「告白」を高く評価し、06年には「テロ支援国家指定」を解除しています。

このままアメリカが「ウソをつかず」にいけば、金正恩の態度も違ったかもしれません。その後何が起こったのか?

2010年から2011年にかけて、中東・北アフリカで「アラブの春」を呼ばれる民主化運動が流行りました。リビアでも内戦が勃発。この時、アメリカ、イギリス、フランスなどは、「反カダフィ派」を空爆によって支援した。結局カダフィは2011年10月、反カダフィ派に捕らえられ処刑されたのです。

この時、血まみれのカダフィの映像が全世界に拡散され、衝撃を与えました。一番衝撃を受けたのは、金正日でしょう。偶然でしょうか。彼は、カダフィが殺された2か月後、つまり2011年12月に亡くなっています。死因は、心筋梗塞だとか。

カダフィは、アメリカを信じて核兵器開発を放棄した。しかし、8年後、アメリカが支援する勢力に殺された。金正恩の立場に立ってみれば、「核兵器を放棄したら、カダフィのように殺される」と考えるのは、普通でしょう。

ここから法則1、「核兵器は手放さない」が出てくるのです。

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