たとえ1億あっても足りぬ。老後を支えるのは「運用」しかない訳

 

また、毎月の生活費とは別に、臨時で必要となる出費もあります。自宅の修繕費や冠婚葬祭の費用など、意外と色々とあります。ですから、毎月の生活費を12倍した金額に、少なくとも30万円から多い人は150万円くらいを年間の支出額として見込んでおく必要があるでしょう。

すなわち、年間の支出額は、「毎月15万円もあれば充分」という人でも、(15万円×12+30万円=)210万円くらいは見込んでおく必要がありますし、「毎月80万円くらいはないと満足する生活ができない」という人は、年間の支出額を(80万円×12+150万円=)1,110万円くらいは見込んでおく必要があります。このように、質素な家計と優雅な家計では、かなり大きな開きがあるのです。

ですから、一概に「年間の支出額の平均は○○万円」というのは意味がなく、各自で自分の家計を把握して、「年間の支出額はいくらなら満足か」を把握する必要があります。そのためには、現金出納帳をつけて、毎月の家計簿を作ることは必須です。

「報告書」のように、年金収入との差額の30年分を計算する(その結果がおよそ「2,000万円」です)というよりも前に、まずは「自分の世帯が満足する生活費は毎月いくらなのか?」を把握する必要があります。老後には、このくらいの経済水準で生活していきたいな、という生活水準を金額的に把握することが一番先で、それを実現するために必要な資産規模を算出するのです。そして、それを目標の金融資産総額とします。

2.自分が長期的に達成可能な運用利回りは年率何%か?

この「運用利回り」ということは、とても重要なことです。いや、「FIRA60」を実現するためには、この「運用利回り」ということが一番重要なことです。

日本人は、資産運用が苦手な人が多いようで、そもそも「資産運用」という概念を度外視してしまって、年金収入と貯金の取り崩しだけで老後の生活費をなんとかやりくりしようと考えている人が多すぎます。

というか、それしか考えないのが当たり前、みたいな風潮がありますが、とんでもありません。「資産運用」を全くしなくても老後が安泰なんていうのは、大成功した起業家か先祖代々の資産家で、5億円も10億円も(いや、それ以上も)持っている超富裕層だけです。

たとえ1億円を持っていても、運用をせずに取り崩しだけで生きていこうとすれば、そして、年金収入がゼロだったら、生活費が月30万円でも30年しかもちません(30万円 ×12ヵ月×30年 =1億800万円)。

年金収入が毎月20万円あったとしても、生活費として月50万円つかいたければ、1億円を持っていても、やはり30年しかもちません。

ですから、「FIRA60」をしようがしまいが、老後を支えるのは「運用」しかないのです。

なお、本書では「運用利回り」といった場合、特別に書き加える場合を除いて、原則的に「税引後」の利回りを意味します。

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