ソフトバンクの四半期決算が発表され、前政権によりスマホ料金の値下げが推し進められた影響で260億円の減収が明らかになりました。説明会で同社の宮川社長は減収が続いた場合の懸念点についてコメント。その内容について解説するのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。通信品質の低下懸念に加えて、Beyond5Gや6Gの開発でも他国に遅れを取ることになると訴え、総務省の政策の矛盾と通信事業者が抱く危機感への不理解を指摘しています。
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ソフトバンクが料金値下げで260億円のマイナス影響──宮川社長「通信の開発面で日本が遅れてしまうのではないか」と懸念
政府による値下げ圧力が、携帯電話会社の収益に大きな影響を及ぼしている。ソフトバンクは11月4日に2022年3月期第2四半期の決算説明会を開催。値下げによって、260億円のマイナス影響があったと明らかにした。
宮川潤一社長が懸念したのがネットワークへの影響だ。このまま値下げによって減収が続けば、ネットワーク維持コストにメスを入れなくてはいけない事態になりかねないというのだ。
「(減収が続けば)基地局整備に影響するかもしれない。コスト削減を徹底的に行い、ネットワーク設計に不備がないようにしているが、これが5年、10年と続くと、中長期的には通信インフラ整備の在り方を見直す必要があるかもしれない。この1~2年は、5Gの立ちあげ期なのでやっていく。設備投資の大きな変更はなく、逆にやり過ぎてCAPEXを超える勢いでやっていく」(宮川社長)。
個人的に気になっているのが、通信品質の低下だ。欧州の国は世界的に見ても、通信料金は安価だが、その分、ネットワークは不安定で、時々、止まることもある。先日、NTTドコモで通信障害が起こったが、通信料金が下がれば、ああいった状況が頻発する可能性もあり得るだろう。
そんな疑問を宮川社長にぶつけたところ「総務省が世界2位の安い料金になったと発表した。しかし、私は通信量や品質を考えると日本は世界一安いと思う。日本が世界で安価な料金プランを目指す方向だったら付いていくと思うが、業界を引っ張っている先進国はそういう方向には行っていない。通信の開発面で日本が遅れていってしまうのではないかと懸念している。今までの日本のキャリアはネットワークの個性を追求してきたので、それが失われるのは悲しい。頑張ってやっていくが、4Gまでのインフラと5Gのインフラは、基地局の数も使用される電力も全く別もの。5Gは相当なエネルギーを消費する。本当に維持できるかちょっと心配だが、工夫してやっていきたい」とした。
総務省がBeyond5Gや6G時代に向けて、世界で日本がリードできるように旗を振っている。しかし、総務省の値下げ政策によって、足下では携帯電話会社の収益が落ち込みつつある。収益が下がれば、ネットワークに対する設備投資や研究開発費が削られていくのは明らかだ。
宮川社長の指摘の通り、アメリカや韓国といった通信業界で強い国は、世界でも高めの料金プランを維持している。日本の通信料金が下がるということは、結果として、日本企業の開発力を奪うことにつながる。このままでは6G時代も日本は世界に大きく出遅れることだろう。この危機感をなぜ総務省は理解できないのだろうか。
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image by:Ned Snowman / Shutterstock.com