歴代最多の受験者数。韓国版「宅建」資格試験に老若男女が群がるワケ

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文在寅氏が大統領に就任して以来、不動産価格が高騰し続けている韓国。そんな隣国で、日本の宅地建物取引士に当たる公認仲介士という資格取得が大ブームとなっていることをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、加熱の一途を辿る公認仲介士試験の現状と、資格保有者の行く末を危惧する不動産業界関係者の声、さらに管轄省庁により予告された試験方式の変更点等を紹介しています。

公認仲介士試験が大人気

韓国のバス料金は1,300ウォン(=126円)。これでソウル圏ならどこへでも行ける。タクシーは初乗りが現行3,300ウォン(320円)。これは値上がりする可能性はある。こうした中、住宅は、たとえばソウルの比較的高い部類にはいるが、34坪(112平方m)アパートが11億5,000万ウオン(=1億1,000万円)くらいである。韓国の住宅(アパート:日本式にはマンション)の価格が文政権に入ってから天井がないほど高騰しているせいだ。

こうした世相と相まって、今こちら韓国では公認仲介士試験が猛烈な人気となっている。不動産屋さんをやるために必要な資格である。ニュースやメディアを参考にしていかなる状況か鳥瞰してみたい。

旅行ガイドだったソ・ジュヒ(37)さんは最近、公認仲介士試験の2次試験を受けて結果を待っている。彼は9か月間、平均して週に40時間ほど勉強した。ソさんは「昨年コロナで休職することになり、未来が不透明な状況で新たな挑戦をしなければならないと心に決めた」とし「仮り採点してみると合格ラインは越えたようだ。周囲でも公認仲介士の試験を難しい試験だと思っているのかたくさん祝ってくれた」と話した。

もうすぐ定年を迎える大企業の部長キム(56)さんも、今年同じ試験を受けた。キムさんは「本を買ってから勉強を始めてもう6-7年も過ぎた」とし「毎回願書を提出しただけで、まともに試験を受けることができなかったが、引退が近づいてきて、切迫した状態になった。仮り採点してみたら合格してるようだと言ったら妻が、娘が大学に合格した時と同じくらい喜んだ」と笑った。

先月30日に行われた公認仲介士試験には、ソさんと金さんのような人が40万人集まった。1985年に公認仲介士試験が始まって以来、歴代最多の受付人員だ。韓国産業人力公団によると、第32回公認仲介士資格試験の1・2次受付人員は40万8,492人、過去最多だった昨年(36万2,754人)をはるかに上回り、今や修学能力試験(昨年49万3,434人)の受験者数を脅かしている。修学能力試験というのは、スヌン試験といわれているもので日本の大学入試センター試験にだいたい相当する。

韓国ではなぜ、今、公認仲介士の試験場に集まるのだろうか。公認仲介士試験は一時、「中年の考試」と呼ばれた。経歴断絶者や引退後の第2の人生を準備する中高年層が多く応募するという認識からだ。最近は「大人の修学能力試験」というニックネームが付けられている。老若男女を問わず、同試験に大挙飛び込んでいるからだ。今年の試験の場合、受付人員のうち30代以下が16万1,904人で全体の39.6%を占める。

10代も936人もいる。若年層はすぐに不動産事務所を設けようという考えより、年々困難になる就職の壁に「保険用」で資格証を準備する場合がほとんだ。大学を休学中の李ヒョンジョンさん(22)もその一人。李さんは今回、公認仲介士試験の1次試験を受けた。李さんは「最近は公認仲介士の資格があれば加算点を与える企業もあり、とりあえず加算点を目標に勉強した」としながらも「もし就職に失敗しても資格を取っておけば、少なくとも不動産に関する面では多少人よりも知識が豊富になる」と話す。

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