安倍氏は大激怒。それでも親中派・林芳正氏を外相に就かせた真の黒幕

 

その集票力の根底には、宇部興産という大企業の存在がある。実は、林芳正氏の母親こそ、宇部興産創業者一族の出身なのだ。

3区の大票田ともいえる宇部市は、宇部興産の企業城下町だ。市域の海沿いに立ち並ぶ工場はすべて宇部興産グループであり、宇部市のみならず山口県全域に同グループの影響力は及んでいる。

もし「10増10減」で現在の山口3区と4区が統合された場合、下関にも山口にも基盤がある林氏は、「一強」といわれてきた安倍氏をしのぐ勢力を新選挙区で振るう可能性が高いのだ。

その林氏は、首相の座への野心を隠そうとしない。文藝春秋11月号で「次の総理はこの私」というタイトルのインタビューに応じ、「次の総裁選では当然、出馬を目指しますよね?」との質問にこう答えている。

「もちろんです。今回は(中略)同じ宏池会の岸田文雄会長が出馬されたので、岸田政権実現のために奔走しました。(中略)一方で、常にチャレンジする意欲を持っていなければ、総裁の順番は回ってきません。(中略)私はチャンスがあれば必ず手を挙げて来ました。その姿勢を、これからも明確にしていきたいと思います」

こういう野心があるからこそ、公認争いで河村建夫氏を退けてまで、衆院に鞍替え立候補したのである。

「宏池会」ナンバー2の林氏は、会長である岸田首相にとって次期総裁選のライバルにもなりうる存在だ。甘利明幹事長が辞任し、茂木外務大臣を後任の幹事長に据えることにしたため、政策通である林氏の外相起用を思いついたものの、そこには逡巡もあっただろう。

外務大臣は、総理候補というに足る重要ポストである。安倍氏の父、晋太郎氏が中曽根政権の外務大臣を長く務め、当時の竹下登幹事長と総理の座をめぐって競り合ったのは有名な話だ。

それでも林起用の腹を固めた岸田首相は、最大の関門をいかにしてくぐり抜けるかに腐心した。いうまでもなく、安倍元首相という関門だ。林氏を外務大臣にしたいと、お伺いを立てれば反対されるに決まっている。しかし、黙って林氏を外務大臣にすれば、今後、政権に協力してもらえなくなるかもしれない。安倍氏の幼児的性格が炸裂したら、どんな仕返しをされるかわからないのだ。

岸田首相は意を決して安倍氏に電話をし、外相の人選中だと伝え、推薦したい人物はいないかと問うた。その時、岸田首相が林氏の名を口にしたかどうかは不明だが、安倍氏は自派閥「清和会」のメンバー数人の名を挙げたという。知名度からして、西村康稔氏、世耕弘成氏、下村博文氏あたりだろうが、むろんいずれも適任とは思われない。

結局、安倍氏が気分を害するのを承知で、岸田首相は外務大臣に林氏を充てた。いつも安倍氏に弱腰な岸田首相にしては、かなり思い切った人事だが、その背後に黒幕が控えているからこそ、なせるワザではないだろうか。むろん、麻生太郎副総裁のことである。

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