筆者の想像するところ、岸田首相は安倍氏より前に麻生氏に外相人事を相談し、林氏起用で了解をとったに違いない。麻生氏はむしろ「思ったようにやれ」とハッパをかけたかもしれない、
もとより麻生氏が安倍氏と同盟関係を続けてきたのは利害が一致するからだ。安倍政権が続く限り自分も安泰だと思ってきただろう。しかし、心底、安倍氏のことを信頼しているわけではない。
森友疑惑で財務省の決裁文書改ざんが問題になったさい、麻生氏は財務相辞任の寸前にまで追い込まれた。一時は麻生辞任で幕引きをはかろうとした当時の安倍首相に対し、「あんたの尻拭いをして責任をとらされるんじゃたまったものではない」と麻生氏が憤ったであろうことは想像に難くない。
これまで麻生氏は岸田氏と定期的に会食し、興が乗れば「大宏池会構想」なる派閥合流話を繰り返してきた。もともと麻生氏は宏池会の出身だが、河野洋平氏のグループに転じ、やがて同グループを継承して今の「志公会」を率いている。
岸田氏が首相になり、ようやく宏池会に光が差してきた今、麻生氏が清和会に対抗する勢力として、志公会と宏池会を統合した「大宏池会」の実現を狙いはじめたとしても一向に不思議ではない。
現在、志公会は51人、宏池会は42人である。足せば、93人の陣容になり、このほど細田博之前会長を衆議院議長にまつりあげて安倍氏が会長についた清和会の90人を上まわる。
このような背景があるからこそ、岸田氏は外相に林氏を起用できたのだ。むろん、安倍氏は納得できないだろうが、外相人事に麻生氏の影がちらついている以上、黙るより仕方がない。モリ・カケ・サクラ、1億5,000万円といった疑惑の真相について知らん振りしてくれた麻生氏に借りがあるからだ。
麻生氏は今後、岸田政権を支え、大宏池会をめざすのか。それとも安倍氏の3度目の総理登板を視野に、安倍氏との関係のほうを、より重視していくのか。その判断が、安倍氏の命運を左右することになるかもしれない。
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image by: 岸田文雄 - Home | Facebook