米軍が日本国内に持つ燃料貯蔵能力の巨大さに見る日米同盟の実態

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原油価格の高騰に消費国が強調して貯蔵する石油の放出を決め、日本も初めて値下げを目的とする備蓄石油放出に踏み切りました。備蓄燃料に関するニュースに触れ、軍事アナリストの小川和久さんが想起したのは、日本国内に米軍がどれほどの石油備蓄能力を備えているかということ。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』では、その巨大な備蓄燃料の防衛をも自衛隊は担っており、ひいては国民が税金で支えていると伝え、日米同盟が米国にとっても死活的に重要という事実を自覚することの大切さを訴えています。

※本記事は有料メルマガ『NEWSを疑え!』2021年11月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:小川和久(おがわ・かずひさ)
1945年12月、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。著書は『フテンマ戦記』『アメリカ式 銃撃テロ対策ハンドブック』『日米同盟のリアリズム』『戦争が大嫌いな人のための正しく学ぶ安保法制』『危機管理の死角 狙われる企業、安全な企業』『日本人が知らない集団的自衛権』『中国の戦争力』『日本の「戦争力」』『日本は「国境」を守れるか』『危機と戦うテロ・災害・戦争にどう立ち向かうか』ほか多数。

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石油放出でわかる在日米軍のロジ能力

ガソリンスタンドに立ち寄るたびに値段が気になる昨今ですが、米国のバイデン政権は11月23日、日本、中国、インド、韓国など石油消費国と協調して5000万バレル(80万キロリットル)の石油を放出する方針を発表しました。これを受けて、日本政府も24日、数十万キロリットルの放出を決めました。

これまで、備蓄石油の放出は湾岸戦争(1991年)、米国のハリケーン被害(2005年)、リビアの政情不安(2011年)に際してIEA(国際エネルギー機関)の要請に応じた例はありますが、価格値下げを目的とする放出は初めてです。

そこで何が言いたいかということですが、米軍が日本列島に置いている燃料の貯蔵能力の巨大さを、自分たちの税金でそれを支えている日本国民に知ってほしいということです。

米国にとっての日本は、ほかの同盟国が会社でいう支店か営業所の位置づけなのに、東京本社に対する大阪本社ほどの重要性があると表現してきましたが、それを象徴しているのが燃料の貯蔵能力なのです。ほかの同盟国にはこのような能力は備わっていません。

日本には米海軍が横浜の鶴見、長崎県の佐世保、青森県の八戸に燃料貯蔵施設を維持してきました。そして、鶴見の570万バレル(9万1200キロリット)は米国の国防総省管内で第2位、佐世保の530万バレル(8万4800キロリットル)は第3位の規模なのです。八戸を合わせた1107万バレル(17万7120キロリットル)は、日本の1日分の消費量326万バレル(5万2160キロリットル)の3日分以上、海上自衛隊の艦船や航空機なら2年間も支えられる規模です。

ちなみに、1日分の石油消費量は米国1717万バレル(27万4720キロリットル)、中国1422万バレル(22万7520キロリットル)で、それと比べても日本に置かれた米軍の燃料貯蔵能力の巨大さがわかろうというものです。

燃料だけでなく日本に置かれた弾薬の貯蔵能力も巨大ですし、情報収集能力も世界最高レベルです。それを日本列島の防衛と重ねる形で自衛隊によって守っているのが日米同盟の実態です。

日米同盟は日本にとって極めて重要ですが、米国にとっても死活的に重要なことを客観的事実で押さえ、誇りを持って米国との同盟関係を機能させる必要性を思い起こさせる石油の放出劇でした。(小川和久)

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image by:viper-zero / Shutterstock.com

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