「チルい」って何だ?
しかし、大賞となったのは「チルい」ということばでした。
選考結果の解説によると、もともとは「落ち着く」「くつろいで過ごす」「一息入れる」という意味の英語「chill-out(チルアウト)」が音楽関係の分野で使われていたのだそうです。それが2010年代後半から「最高にチルい時間」「チルい雰囲気」という形で、音楽以外の用法が広まったのだといいます。
ということは、4~5年ほど前から使われていたということになります。しかし、僕は、このことばを全く知りませんでした。音楽に疎いのか、ことばに疎いのか、単に鈍感なのか…。
三省堂のホームページには「今年の新語」としては2016年に初めて「チルする」(落ち着く)、「チルってる」(落ち着いている)が投稿されたとあります。時間を経て、今年「チルい」が選ばれた背景には、やはりコロナ禍で在宅時間が多くなったからかもしれません。
家でゆっくり落ち着きたい、という思いが「チルい」を広める要因になったようにも思えるのです。
「チルい」は、「チルアウト」の一部「チル」を使って、形容詞を派生させたものです。少し古いことばになりますが「ナウい」「エロい」、最近では「エモい」もその類です。
編者による語義の立て方
三省堂の新語大賞の面白いところは、辞書の著者・編者が、大賞になったことばの語義(意味)を真剣に考え発表するところにあります。
『三省堂国語辞典』の編者・飯間浩明さんは
チル・い(形)[「チル(←chill out)」を形容詞化した語]〔俗〕気持ちがゆったりする感じだ。「最高に~曲・日曜の午後は~」〔2010年代後半に広まったことば〕
と記しています。また、『三省堂現代新国語辞典』の編者・小野正弘明治大学教授は
チル・い(形)[←chill]気持ちが落ちついてくつろげるようす。「~音楽で安らぐ・チルくロマンティックな風景」[英語chillは、もともとは、冷たさや肌寒さを意味していたが、特に、chill outと言うときなどには、俗語としての用法で、落ちついたとか、くつろいだという意味で用いられるようになり、「チルい」は、その意味を引きついだもの。(以下略)]
のように定義しています。
12月13日には、日本漢字能力検定協会主催の「今年の漢字」が発表されます。
ことばや漢字で、その年を振り返るのも楽しみの一つです。
今年の漢字に「黙」が選ばれないかなあ、と密かに、そしてしつこく思っているのですが…。
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