「チルい」を知らないとおじさんなのか?2021年の新語に選ばれた謎ワード

 

「チルい」って何だ?

しかし、大賞となったのは「チルい」ということばでした。

選考結果の解説によると、もともとは「落ち着く」「くつろいで過ごす」「一息入れる」という意味の英語「chill-out(チルアウト)」が音楽関係の分野で使われていたのだそうです。それが2010年代後半から「最高にチルい時間」「チルい雰囲気」という形で、音楽以外の用法が広まったのだといいます。

ということは、4~5年ほど前から使われていたということになります。しかし、僕は、このことばを全く知りませんでした。音楽に疎いのか、ことばに疎いのか、単に鈍感なのか…。

三省堂のホームページには「今年の新語」としては2016年に初めて「チルする」(落ち着く)、「チルってる」(落ち着いている)が投稿されたとあります。時間を経て、今年「チルい」が選ばれた背景には、やはりコロナ禍で在宅時間が多くなったからかもしれません。

家でゆっくり落ち着きたい、という思いが「チルい」を広める要因になったようにも思えるのです。

「チルい」は、「チルアウト」の一部「チル」を使って、形容詞を派生させたものです。少し古いことばになりますが「ナウい」「エロい」、最近では「エモい」もその類です。

編者による語義の立て方 

三省堂の新語大賞の面白いところは、辞書の著者・編者が、大賞になったことばの語義(意味)を真剣に考え発表するところにあります。

『三省堂国語辞典』の編者・飯間浩明さんは

チル・い(形)[「チル(←chill out)」を形容詞化した語]〔俗〕気持ちがゆったりする感じだ。「最高に~曲・日曜の午後は~」〔2010年代後半に広まったことば〕

と記しています。また、『三省堂現代新国語辞典』の編者・小野正弘明治大学教授は

チル・い(形)[←chill]気持ちが落ちついてくつろげるようす。「~音楽で安らぐ・チルくロマンティックな風景」[英語chillは、もともとは、冷たさや肌寒さを意味していたが、特に、chill outと言うときなどには、俗語としての用法で、落ちついたとか、くつろいだという意味で用いられるようになり、「チルい」は、その意味を引きついだもの。(以下略)]

のように定義しています。

12月13日には、日本漢字能力検定協会主催の「今年の漢字」が発表されます。

ことばや漢字で、その年を振り返るのも楽しみの一つです。

今年の漢字に「黙」が選ばれないかなあ、と密かに、そしてしつこく思っているのですが…。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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