大手に勝ち続ける。地域密着型で大成功を収める地方スーパーの巧みな戦略

 

では、このお店の一番人気をご紹介します。“スズキヤと言えば、これ!”という商品です。

「鮭と彩り野菜の茶々のり弁 626円」。

ご飯に昆布茶とかつお節、揚げ玉、昆布の佃煮、白ごまをまぜ込み、丸い容器に入れ、千切った焼き海苔を全面にかぶせています。その上に、骨抜きした焼き鮭、高野豆腐、がんもどきと野菜の煮しめ、白身魚と豆腐のふんわり天、きんぴらごぼう、竹輪の磯辺揚げ2種、金時豆、玉子焼き、大根の甘酢づけをのせています。おかずはすべてひと口大にしてあり、海苔を千切ってあるのも、食べやすさのためです。

また、お吸い物の素が添付されており、半分ほど食べた時点で、お茶漬けができるようになっています。

のり弁にしては豪華で、価格も高めになっています。しかし、販売開始1年半で、20万食が売れています。いまも連日、完売状態が続いている、大ヒット商品です。全国3,000店のスーパーが参加する、「お弁当・お惣菜大賞2020 のり弁部門」で、「最優秀賞」を獲得しています。

他にも大ヒット商品はたくさんあります。

「自家製国産鰻 うな重上 2,786円」。

毎朝、活きたうなぎを手で捌き、蒸し上げ、タレに漬け、焼き上げます。このうなぎは、スーパーでは珍しく、専属の職人が調理しています。スーパーにしては高いかもしれませんが、こだわりを持った専門店と同じならば、安いのではないでしょうか。

もうひとつ、興味深い商品があります。

「フォアグラときのこの春巻き 486円」。

この商品は、地元にある無国籍料理店が考えた料理です。「スズキヤ」では、地元の飲食店や企業とのコラボ商品を開発することで、自店だけではなく、地域全体が活性化するように努めています。この春巻きも「お弁当・お惣菜大賞2021 中華点心部門」で、優秀賞を獲得しています。

高級食材のフォアグラと舞茸、エリンギ、しめじ、マデラ酒(ポルトガルの酒)、生クリームを合わせて、クリーム煮にして、皮で巻き、揚げています。1本486円は高いのですが、1日に540本売れたことがあるほどの大ヒット商品なのです。

これらはほんの一部で、独自商品を中心に、300種類以上のお弁当・お惣菜が並んでいます。これほど魅力ある商品が並んでいれば、大手に負けることはありません。

私が推察するには、このお店はそこそこのものを売るスーパーではなく、優れた個人商店の集まりなのではないでしょうか。

人気のお弁当を開発したのは、勤続30年のベテランパート女性。うな重は、専属の職人。春巻は、地元の料理店。すべてプロ中のプロが開発した商品です。多くの独自商品をそれぞれのプロが、競い合うように生み出しています。魅力的な商品が並んでいるのも納得できます。

ライバルたちは、商品を仕入れて売る、言わば流通させているだけですが、「スズキヤ」は常に独自商品を店頭に並べているのです。この差は大きく、たとえ小さなスーパーであっても、大手に勝つことができる戦略なのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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