やっぱり応援したくなる~良い商品を生む正直経営
去年、三島食品の「あおのり」がちょっとした話題を呼んだ。
実は、地球温暖化の影響で、それまで使っていた香り高く味も良い、スジアオノリが激減。やむなく、見た目は大差ない別の品種に変更した。その事情を消費者に伝えようと、パッケージを青から緑に変え、裏に「お詫びのメッセージ」までのせた。
「自信をもってお届けしてきたスジアオノリを伝統の青いパッケージで作ることができなくなりました」と、以前とは違う商品だということを正直に伝えたのだ。
すると、消費者からは「読んだ瞬間、スーパーで涙が出そうになりました」「貴社を誇りに思います。今後も出来る限り支持いたします」といった声が、続々と寄せられた。
「ビジネスをしていて応援してもらえるっていうのは、この上ない喜びです」(三島)
一方でスジアオノリの減少を予期していた三島はすでに手を打っていた。スジアオノリの陸上養殖だ。およそ2万平方メートルという日本最大規模。良いものを作るためなら、手間も金も惜しまない。
これにより、年内にはスジアオノリが戻ってくるという。
~村上龍の編集後記~
ふりかけの「ゆかり」を知らない日本人はほとんどいない。ただ三島食品はいっさいテレビのCFを打っていない。テレビのCFを打たずに国民食となった商品をわたしは知らない。「テレビで宣伝するくらいなら、その金を原材料にかける」という考え方は、全社員に共有されている、それが誇りを生んでいる。その誇りは精神的な余裕を生み、ユーモアが芽生える。「B面活動」がその典型だ。真剣なユーモアで、心の疲弊を防ぐ取り組みが行われている。
<出演者略歴>
三島豊(みしま・ゆたか)1954年、広島県生まれ。1978年、東京大学大学院を卒業後、京セラ入社。1981年、三島食品入社。1992年、社長就任。2017年、会長就任。
(2021年9月30日にテレビ東京系列で放送した「カンブリア宮殿」を基に構成)