「ゆかり」でお馴染み三島食品の社長が自称する“変な会社”の生き残り戦術

cp20211213-e
 

発売から50年以上を経た今も愛され続ける「ゆかり」などのロングセラー商品を擁し、次々とヒット作を生み出し続けることでも知られる三島食品。老舗の座に胡座をかくことなく常に進化し続ける同社ですが、何がそのモチベーションとなっているのでしょうか。今回の「テレビ東京『カンブリア宮殿』(mine)」では、先代から三島食品を引き継いだ会長の三島豊氏を始め、あらゆる立場で同社を支える人々へのインタビューを通し、その秘密を探っています。

イノベーションを生み出す!~「変な会社」の驚きサバイバル術~/三島食品

「ご飯のお供」の代表格といえば、お家時間の増加で需要が高まっているふりかけ。この5年で家庭での購入額が10%近く上がっている。味のバリエーションも増えており、カレー味や焼肉味、さらにご当地ふりかけ、なんてものもある。

そんな激しい競争の中で、地味ながらファンをつかんでいるのが「ゆかり」だ。年間売り上げは41億円。ふりかけとしては「のりたま」に次ぐ売れ筋商品だ。赤じその香りと梅の酸味が食欲を掻き立てる、発売から50年以上愛され続けるロングセラーである。

その「ゆかり」を作っている三島食品は広島市にある。「ゆかり」は魚を原料に使う他のふりかけとはちょっと違った方法で作られている。メインの原料は赤じそ。それを塩と梅酢に3ヵ月漬け込み、いったん漬物にする。「余計なアクが抜けて、苦味などが残らないようになる」(生産本部・蒲川健吾)と言う。つまり、「ゆかり」は漬物のふりかけなのだ。

広島工場には「最後の砦」と呼ばれる女性たちがいる。検査を終えて流れてくる「ゆかり」をじっと見つめ、機械を止めた。何か見つけたようだ。「赤じその茎です。包装した時に穴が開くかもしれないので、取り除いている」と言う。秒速50センチの流れの中でも、色や大きさが異なるものを一瞬で見極める。

「ゆかり」作りへのこだわりは工場の中だけではない。三島食品の赤じその自社農園。ふりかけメーカーが自ら原料を栽培するのは珍しかった14年も前から始めている。

その畑で、会長の三島豊(67)がドローンを飛ばしていた。

「上空から撮ったたくさんの写真を3Dデータにして計算し、農場の成長分布を出すことができないかと」(三島)

cp20211213-1

成長が遅い場所を見つけ出し、そこの土壌を改良しようというのだ。

赤じそは「上と下の葉では香りが違う」という。下の葉は硬くて香りが弱い。だから「ゆかり」には、柔らかくて香り高い上5センチの新芽だけを使う。使用する赤じそは年間3,000トン。使用量としては日本一だ。しかも、「ゆかり」に最適な品種まで自社で開発している。

「『ゆかり』を作るなら、赤じそについては絶対にナンバー1になろうと」(三島)

三島食品は家庭用ふりかけで、「丸美屋」に次ぐ業界2位。ふりかけだけで53アイテムを揃えている。

一番の売れ筋が長女の「ゆかり」、青じその「かおり」、タラコの「あかり」。「ふりかけ三姉妹」と呼ばれる大ヒット商品だ。また6年前、弁当ブームに目をつけ発売したのが「のり弁の秘密」。カツオ節をふんだんに使ったノリとご飯の間に敷く専用のふりかけだ。

「のり弁当はスーパーでも当たり前になっていますし、日本人はのり弁が好き。それ専用の商品ができないかと」(三島)

新しいことに挑戦する一方で、先代から引き継いだ教えも頑なに守り続けている。

「創業者は、『とにかく良いものを使え、宣伝に金を使うくらいなら良い原料を買え』と。それをずっと受け継いでいます」(三島)

その言葉を象徴する商品が「瀬戸風味」。発売から55年。「地方の小さなふりかけ屋」だった三島食品を広く知らしめるきっかけになった商品だ。使われているのは厳選して仕入れた食材ばかり。しかも「3たて」と呼ばれる製法でおいしさを極めている。

「瀬戸風味」に使う鰹節は本場・鹿児島の枕崎から仕入れた「荒本節」。「香りと味が全然違う」という。しかも常に「削りたて」しか使わない。削るのはその日使う分だけ。ゴマは生ゴマから仕入れ、使う分だけをその都度、焙煎する「煎りたて」。パリパリ感が売りのノリもブレンドする直前に焼く「焼きたて」。

この「3たて製法」が素材の旨味と香りを引き出しているのだ。

cp20211213-2

254147232_316012703694602_8823022577465445200_n

print
いま読まれてます

  • 「ゆかり」でお馴染み三島食品の社長が自称する“変な会社”の生き残り戦術
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け