「ゆかり」でお馴染み三島食品の社長が自称する“変な会社”の生き残り戦術

 

従業員のやる気がアップ~仕事が楽しくなるB面活動

創業者の父・哲男は5年前に他界した。

「小さい頃はあまり話してないんです。仕事、仕事で。『継げ』と言われて継いでみて、一時期は『何で?』と思ったこともあるけど、今になってみると大変いいものを残してくれたと思います」(三島)

社長の座を引き継ぐ時、父から言われたひと言が今でも三島の心に残っている。

「『あとは頼む。永く続かせてくれ。永続する企業になれ』と」

会社を永続させるため、三島は様々な改革案を打ち出す。だが、いざ実行しようとすると、そこに思わぬ壁が立ちはだかった。

それを象徴するのが工場の貼り紙だ。「安全の注意点」などを掲げた、どこの工場でも当たり前に見かけるものだが、これを始めた当初、「あるまじきこと」と大問題になった。古参の幹部が「先代は『工場はスッキリ清潔に』と仰っていた」というのだ。三島は耳を疑った。

「『それはやっちゃいけないんです、三島食品では』と言われた時は、目が点になった。言葉は悪いが、ここまで洗脳されているのかと思った」(三島)

創業者の偉大さが身に染みている幹部たちにとって、その方針を覆すことなど考えられなかったのだ。だが、このままでは会社は成長できないし、永続もできない。三島が社員の意識を変えるため始めたのが「B面活動」だった。

「B面活動」に10年前から取り組んでいる生産本部の三浦香織は、普段は夕方5時まで工場で働いているが、この日は作業が一段落した午後3時すぎ。工場を後にした。真剣な顔つきで描き始めたのはマンガだ。

「就業時間中でも生産が落ち着いたタイミングの1~2時間とか、そういったちょっとした時間をいただいてやっています」(三浦)

「B面活動」とは、会社に関係することなら勤務中でも自由にやっていいという制度。三浦の「B面活動」はチラシを作ること。しかもそれが今、会社の新たな武器になっている。

営業部の田中美千子が見せてくれたのは、三浦が描いた田中を主人公にした自己紹介漫画。これを名刺代わりに、営業先に渡しているという。仕事に取り組む姿勢や趣味など、その人となりを漫画で紹介しているのだ。

「初めて渡した時、いろいろな話に発展したり、非常に充実したツールになっています」(田中)

工場勤務・峠本香織の「B面活動」は会社のオリジナルソング作り。社員を駆り出してレコーディングも行われた。出来上がった曲は倉庫で流される。そこにはキリンの模様のロボットが稼働している。実は工場見学に来た子どもたちに喜んでもらおうと、ロボットの動きに合わせた曲を作っていたのだ。

「自分の活躍の場をもらって、頑張ったからこそ『良いふりかけ作ろう』というやる気につながっています」(峠本)

今や「B面活動」には多くの社員が参加。総務部の社員たちは会社のノベルティーグッズを作り始め、工場勤務だった女性は自ら機械の改良を買って出た。社員がどんどん積極的になって「挑戦する集団」に生まれ変わった。

社員の意識が変わったことは新商品の開発にも結びついている。

新商品のPR動画作りに参加している常務の今村達郎は、重役業をこなす一方で、赤じその爽やかな香りをいかした口当たりのいいリキュール「ゆかりクラシック」を、「赤じそをゆかり以外にも使いたい」と2年がかりで開発した。

「“世界をゆかり色に染めよう”というのが自分のビジョン。それに対して、会社は応援してくれているので、それは幸せなことだと心から思っています」(今村)

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