シャープが新シリーズ「AQUOS wish」を発表。来年1月中旬からの販売予定で、本体価格は2万円台を想定しているようです。この想定価格が意味するのは、店頭で「1円スマホ」として売られること。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが「1円スマホ」が増える背景を解説。安くスマホが手に入れられるのは悪いことではないものの、若い世代が低スペックなスマホにしか触れない弊害を心配しています。
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シャープがAQUOS wishで「1円スマホ」に参入──上限2万円割引を狙ったスマホばかりで日本の未来は大丈夫なのか
シャープは12月6日、新シリーズ「AQUOS wish」を発表した。筐体に再生プラスティックを使用。背面カメラは一つしか搭載しないなど、シンプルな構成でZ世代をターゲットにしているという。本体価格は2万円程度を想定。つまり、店頭では1円で売られるのは間違いないだろう。
もはや、日本市場におけるスマートフォンは「1円」でなければ売れない時代に突入しようとしている。
2021年上半期、MM総研の調べでは、XperiaがAndroidスマートフォンにおける出荷台数でシェア1位を獲得したという。その原動力となったのがNTTドコモ向けの「Xperia Ace II」だ。本体価格は2万円程度であり、店頭で1円で売られたことでiPhone SEをしのぐほどの大ヒットとなった。
店頭を見渡せば、Galaxy A22やarrows Weなど1円スマホが当たり前になってきた。シャープがAQUOS sense6、ソニーがXperia 10 IIIなどを投入しているが、もはや4~5万円クラスでも「高い」ということで、キャリアやメーカーとしても本体価格が2万円、割引をかませて1円でなければ売れないという認識なのだろう。
そもそも、キャリアやメーカーが2万円を目指すようになったのは、総務省が電気通信事業法を改正し、「回線契約に紐付く端末割引は2万円程度まで」という設定をしたからに他ならない。総務省としては回線契約と端末割引の完全分離を目指す中、NTTドコモが「3万円を上限に」と主張したにもかかわらず、なぜか総務省が1万円を減額して「2万円」という金額が決められたのであった。
特に根拠があるわけではなく、突然降ってわいてきた「2万円」という設定金額に対して、キャリアやメーカーがこぞって安価なスマートフォンを開発し、結果として、2万円のスマートフォンができ、店頭では1円で売られるようになった。総務省が散々、嫌っていた店頭での「1円販売」は撲滅されるどころから、しぶとく生き残ることになったのだ。
確かにユーザーからすればスマートフォンが安価に買えるのはメリットかも知れない。これまでのように、あまりスマートフォンを使わない人でもこぞってハイエンドを買っていた状況からすれば、選択肢が広がったのは素晴らしい。
ただ、1円のスマートフォンが普及することで、日本における「IT活用」は世界に比べて遅れることにつながりやしないか心配だ。Xperia Ace IIが売れたのは良かったが、そうはいっても4Gにしか対応していない。2020年に5Gが始まっているにもかかわらず、このタイミングで4Gスマートフォンを購入すれば、今後、数年、5Gに移行することはない。本来であれば、誰もが5Gに切り替え、大画面でサクサクとした操作性で高速で大容量な通信を享受できれば、国民のデジタルトランスフォーメーションも加速するのではないか。
1円スマホが普及するのはいいのだが、画面やチップセットのスペックが低いスマホがスタンダードになるようだと、モバイルインターネットにおいて日本は、アメリカや中国、韓国など世界から取り残されるような不安を感じずにはいられないのだ。
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image by:Cineberg / Shutterstock.com