政治と経済は別問題と捉える日本経済界の旧態依然
そして、これを現在の日中関係に落とし込めると、中国に展開する日本企業には大きなリスクが生じていると言える。日本は最近、半導体誘致で熊本県に工場を作る動きを進めているが、それは、経済安全保障上、台湾と関係を強化していることを意味する。よって、習政権は対中で日本が半導体サプライチェーンを強化していると認識し、それによって中国に展開する日本企業に金銭的な罰金を科してきても不思議ではない。日本政府が台湾独立を支持するというような発言をしなくても、それに見合う姿勢を示せば、よりその可能性は高まるだろう。
しかし、それでも中国は日本企業にとって重要な市場であることに変わりがなく、依然として日本企業の中国進出は勢いを持っている。将来的なチャイナリスクを考え、ベトナムやタイなどASEANへのシェアを拡大し、リスク最小化を検討する企業も増えてはいるだろうが、日本経済界の中にはまだまだ政治と経済は別問題と捉える伝統的考えが根強い。だが、それは時代とともに変化するものであり、日本企業はこれまで以上に政経分離が中国で揺らいできていることを一日も早く認識するべきだ。それは、欧米と中国との対立が先鋭化すればするほどリスクは上昇する。
また、日本の高度経済成長の時代、米国では日米貿易摩擦が発生したが、米国の保護主義的な動きも強まるなか、仮に米国が対中政策で日本が同調しないなどとの認識を強めれば、日米貿易摩擦の再来は考えにくいにしても、小規模ながらも日米間で摩擦が生じてくる可能性もある。
いずれにせよ、中国は岸田政権の対中姿勢を注視している。それによって政経分離のハードルも上げ下げが生じ、場合によって日本企業が政経分離の崩壊の餌食になってしまう恐れがあろう。
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