安倍政権の残滓か。新潟のドン裏金騒動の背景に見えた河井夫妻事件の影

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先日掲載の「新潟のドン『裏金2~3千万撒け』で露呈した自民党“金権選挙”のウラ実態」等の記事でもお伝えしたとおり、泉田裕彦衆院議員と星野伊佐夫新潟県議の当人同士のみならず、支援者を巻き込んだ応酬合戦が続く新潟の裏金騒動。両者の言い分は未だ平行線を辿ったままですが、識者はこの「事件」をどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『権力と戦う弁護士・郷原信郎の“長いものには巻かれない生き方”』では元検事で弁護士の郷原信郎さんが、専門家の目線で泉田氏が公開した録音記録の内容を検証。さらに郷原さんは、そこに見えた河井夫妻選挙違反事件の思わぬ影響についても指摘しています。

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プロフィール:郷原信郎(ごうはら・のぶお)1955年島根県松江市生まれ。1977年東京大学理学部卒業。鉱山会社に地質技術者として就職後、1年半で退職、独学で司法試験受験、25歳で合格。1983年検事任官。2005年桐蔭横浜大学に派遣され法科大学院教授、この頃から、組織のコンプライアンス論、企業不祥事の研究に取り組む。2006年検事退官。2008年郷原総合法律事務所開設。2009年総務省顧問・コンプライアンス室長。2012年 関西大学特任教授。2017年横浜市コンプライアンス顧問。コンプライアンス関係、検察関係の著書多数。

泉田・星野両氏の「裏金」バトル、背景に「河井夫妻事件」の影響か

今年10月31日に投開票が行われた衆議院議員選挙をめぐって、小選挙区(新潟5区)に立候補して落選し、比例復活した自民党の泉田裕彦衆院議員が、同党の星野伊佐夫・新潟県議から2,000万~3,000万円の裏金を要求されたと告発した。

それに対して、星野県議が反論会見を開いて疑惑を否定し、泉田議員は星野県議の自宅で録音したという音声のやり取りを公開した。

しかし、これについても、事実関係をめぐって両氏の主張は真っ向から対立している。

そして、自民党長岡支部が、新潟5区支部長を泉田氏から差し替えるよう県連に申し入れを行うなど対立が深まり、バトルの様相を呈している。

この問題については、泉田氏が「裏金要求があったこと」を公にした時点で、YouTube《郷原信郎の「日本の権力を斬る」》で「【自民党泉田裕彦議員が暴露した「新潟県議の裏金要求」は、今なお続く“自民党選挙の実態”なのか?】」と題して取り上げ、自民党的な不透明な選挙資金の流れの問題が背景にある可能性を指摘した。

その後、泉田氏と星野氏の会談の記録が記者会見で公表され、具体的なやり取りが明らかになったが、一般公開されているのは泉田氏が文字起こしして「解説」を加えたものであり、そこには、星野氏の「手振り身振り」なども含まれている。

生の記録を確認しなければ、両氏の論争について法的判断を加えることはできない。

しかし、両氏の間でこのような争いが行ったことの背景に、元法務大臣の多額現金買収事件として社会に衝撃を与えた河井夫妻事件が影響していることは、泉田氏が「広島の事件」に言及したことからも明らかだ。

私は、検察捜査が本格化した頃から、ヤフーニュース記事「河井前法相“本格捜査”で、安倍政権『倒壊』か」「検察は“ルビコン川”を渡った~河井夫妻と自民党本部は一蓮托生」等で、選挙に向けての支持拡大のために相応の資金が必要であり、政治的影響力の大きい有力者に対して使途を限定しない形で「不透明な資金のやり取り」が行われるということが事実上野放しになってきたが、河井夫妻が行った地方政治家に対する金銭の供与が買収罪に問われるとすると、日本の公職選挙の情景を大きく変えることになると指摘した。

概ね明らかと考えられる両氏の発言と両氏の主張の対立点との関係を整理し、河井夫妻事件が、今回の問題にどのような影響を与えているのかを考えてみることにしたい。

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