安倍政権の残滓か。新潟のドン裏金騒動の背景に見えた河井夫妻事件の影

 

泉田氏が記者会見で公表した会談記録によると、星野氏とのやり取りは、星野氏から、「今日の話は誰も知らない」と、それが「他人には秘密の会談」であることを前置きした後、世論調査の数字を見せて、「あなたが勝っているとは言えない」「2位であるのは間違いない」として、相手候補が巧妙に選挙対策を進めており厳しい選挙情勢だという前提で、「小選挙区で当選するための対策」の本題に入り、次のようなやり取りが行われたという。

星野氏 「それで泉田さん 勝とうさ どう思うね」
泉田氏 「やっぱり小選挙区で勝つかどうか、全然違いますもんね」
星野氏 「もしさ、比例でひっかからなかったら終わりだよ」
泉田氏 「ええ。ええ」
星野氏 「このままでいったら比例にひっかからないから、だめだね。このままでは比例にひっかからない。比例にひっかからない。だからこれさ、あなたも俺も同じだと思うけど。結局、しくじってやられるのはあなたと俺なのだよ、ハッキリ言うと。誰でもないのですよ。(中略)
 俺が一方的に話しているけど、とにかく必要経費を早くまこう。もう余裕がない。選挙が始まってからなんてバカはいない。今だ。今でも遅いぐらいだ。ここに2,000万や3,000万をもったいながったら人生終わるよ。そこなんだよ。
 大部分は領収書がもらえるやつだから。これね、いちいち警察に報告するわけではないのだから。これはね、早くしないと、後で悔いが残るぞ。1億や2億の話でなくなるから。そんなものではなくなるから。
 これ一つね、検討というか、早く実行するのだな。そうしたなーー。できたら頭を取りたいよね。100票でも200票でもいいさ。頭を取りたいよね。ああ、メンツがあるわね」

泉田氏は、この中の「必要経費を早くまこう」「2,000万や3,000万」との星野氏の発言が「裏金の要求」だとしているのに対して、星野氏は、選挙運動や選挙に向けての活動に関して適法に支出できる「経費」を要求したものに過ぎないと反論している。

問題は、星野氏が言っている「必要経費」の意味であり、実際にどのような趣旨の金を意味していたのかだ。

言葉の上では「必要経費」と言っているが、それが、本来の「必要経費」を意味するものではないのではないかと思える星野氏の発言が、その後に随所に見受けられる。

泉田氏が

「違法行為にならないようにしないといけないので」

と言ったのに対して、星野氏は

「そんなものはね、いいですか、ハッキリ言うよ。言葉の問題だけであって、実際はそんなの気にして報告する者なんか一人もいないからね」

と言っている。これは「適法な資金のやり取り」であることを星野氏自身が否定しているように思える。

泉田氏が公表した「録音記録の起こし」によると、

「先生、ちゃんと寄付できる時に言ってくれればいいのに、どうしたらいいのですかね」

と言っているのに対して、星野氏は

「あんた一人。一人の腹、一人の腹にして、そして、そして信用できる人を使う。あんたの信用できる人。誰にも言ってはダメ、これは、この話は」

と言っている。これは、誰にも知られないで密かにやり取りするという意味で「表に出さない金」を意味しているように思える。星野氏は

「まくというのはばらまくのではない。実力者、地区地区の。例えば」

と言って、各地区の有力者の個人名を挙げているが、泉田氏が、

「各地区に既に必要な経費として可能な寄附は行っている」

と言うと、星野氏は

「そういうのとは違うのだよね。俺が言っている意味は違う。俺の方から何だよ、食事代とか」

などと言っている。泉田氏が既に行っていた「適法な寄附」とは異なる趣旨のお金を「ばらまく」という意味で言っているように思える。

上記のやり取りの通りだとすると、星野氏が出すように求めた「2,000万や3,000万」というのは、公選法上、政治資金規正法上、適法な行為とは言えないように思えるが、それ以前の泉田氏側の選挙資金・政治資金の支出状況や、これらの発言の時点で泉田氏の選挙に関して「必要経費」として適法に支出できる経費が存在したのかなどの事実関係が明らかにならなければ、確たることは言えない。

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