さて、最後にシンガポールのストレートタイムズです。
シンガポールはこの問題で微妙な立場です。そもそも米国の民主主義サミットに招待されていないのです。しかしながら、米国と密接な関係を持つ英連邦国です。そして中国と世界をつなぐ役割もしています。
そのため、この問題に多くの記事を掲載しています。ここではサミットで起こった事件(事故)の記事を紹介しましょう。
ストレートタイムズ紙(シンガポール)12月13日
先週行われたジョー・バイデン米大統領の民主化サミットで、台湾のオードリー・タン デジタル大臣のビデオ映像が突然カットされた。
純粋に技術的なトラブルとの見方もあるが、おそらくはプレゼンにあった地図が、台湾と中国で異なる色で表示されていたためだ。
ホワイトハウスは正式なコメントを出さなかったが、国務省は、画面共有に関する「混乱」の結果、ビデオ配信が中止されたと述べた。
数分後、オードリータンさんがプレゼンが戻ったとき、音声とキャプション付きのスクリーンショットがあるだけだった。その後、画面上に「このパネルで個人が述べたいかなる意見も、個人のものであり、必ずしも米国政府の見解を反映するものではありません」と免責事項が宣言された。
情報筋は、これは「中国などからの挑戦に直面して民主主義を強化する」というサミットの使命と相反するものだと見ている。
解説
この放送事故は米国側にとっては大失態でしょう。
「専制主義をとる中国に民主主義国が集結して断固たる決意をしめす」のがこのサミットの目的であったはずです。それにもかかわらず主催した米国の内部統一がされていないことが自明になったのです。
ストレートタイムズは米国と中国の間のこの論争を注意深く見ており、いくつもの記事を掲載しています。
そしてこの事故については「台湾に対する米国バイデン政権の支持は、これまで述べてきたほど『盤石』ではないことを示唆するものだ」といった意見も載せています。
以上、見てきたように世界には国によりいろいろな意見があります。我々、日本人として知っておくべきなのは、このような観点での論争で行われているという事です。
賛否は別として、私が印象深く思うのは、「民主主義とは」という根源的な問いかけをして、アメリカに反論する中国の姿です。
かつて日米貿易摩擦のとき、日本側からは些末な言い訳のような反論がほとんどでした。このような根本的な議論の挑戦をしてこなかったのです。「中国が民主主義だ」との意見は支持しませんが、ここには日本が学ぶべき点があると考えます。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月19日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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