完全アウト。イケア日本CM「女性差別」的演出の酷すぎる時代錯誤

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幅広い層から人気を誇る家具量販メーカー「イケア」日本法人のCMが、あまりに女性差別的ではないかと物議を醸しています。実際の映像を視聴した識者はどのように見るのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、個人的には「アウト」とした上で、その理由をCMのシナリオを確認しつつ解説。さらになぜこのような映像がオンエアされるに至ったのかを推測しつつ、失敗事例として関係各位で共有すべきレベルであるとの厳しい見方を記しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2021年12月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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イケア日本のCFはアウトであるという理由

スウェーデンの家具製造メーカー「イケア」日本法人のCFについて、「女性差別」ではないかとの批判が出ています。この動画ですが、現時点ではYouTubeで閲覧可能なようです。

実際のCFですが、まず「15秒バージョン」については、

イケアTVCM あっという間に、いい毎日。グラドム篇

あと、「6秒バージョン」というのもあります。

イケアTVCM あっという間に、いい毎日。グラドム篇(6秒)

賛否両論があるようですが、私は「アウト」だと思います。

とりあえず、シナリオを確認しましょう。

1.ダンナ(らしい)人物の足が映り、床の絵本の上に置かれたドリンク、お菓子などを足で引っかけてしまいします。ドリンクなどは、おもちゃの上にこぼれ、グチャグチャな状況になるのですが、次のシーンでは、あらためて丸いお盆の上にドリンクとスナック類が美しくセットされています。

―――>グチャグチャな状態の「片付け」も「掃除」も、「再セット」も女性(妻?)が行なったことが示唆されます。

2.その後は、妻がそのお盆を両手に持ってしゃがむ姿が上から映され、ポップコーンやジュースを夫と娘が次々に手に取ります。

―――>終始妻はしゃがんだままで、サービスレベルとしては、外食というより銀座のクラブのような「非対称性」を感じます。

3.給仕が終わると、妻は立ち上がって、「あわてて」夫と娘が座るソファの脇にあるテーブルの脚部分に乗せます(脚とテーブルが分離して、テーブルをお盆のように使用できる製品のPR)。

―――>妻が「あわてて」いることで、「自分も見たい番組」をこれまで我慢して家族に尽くしていたことが示唆されます。

4.更に、妻は急いでソファの後ろに立ってTVを視聴。自分も食べ物を頬張っており、飲食には参加して笑顔で番組を見ているし、夫との接触も演出されていることから家族の関係は良好なことが示唆されています。

―――>しかし、ソファの半分は空いており、娘の右隣の空間は半分空いているので、そこに行って寛げばいいのに、夫と娘の視界を遮ってそこへ戻ることはしません。あくまでソファの後ろに立って見ています。

5.その後、「あっという間に、いい毎日。この家が好き」というテロップが出ます。

―――>このテーブルについては、「料理やドリンクをこぼさずに、家の中の好きな場所へ自由に持ち運べる」と宣伝がされており、このコピーもこれに呼応させているのだと思われますが、「あっという間に」というのには、妻が「あっという間に片付けをして掃除をし、再度食べ物飲み物をセッティングした」という自己犠牲の神対応が「あっという間」というニュアンスが消えません。

この5段階攻撃というのは、サブリミナル的にものすごい重層的な効果になっています。

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